研究課題/領域番号 |
18K04717
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
竹屋 浩幸 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主席研究員 (80197342)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フラーレン / ナノファイバー / 超伝導 / アンモニア |
研究実績の概要 |
我々は、フラーレン・ナノ・ファイバー(FNF)の超伝導特性を測定し、超伝導線材としてのポテンシャルを評価してきた。これまではC60フラーレン薄膜や単結晶の超伝導の特性評価がなされてきたが、超伝導の応用素材として見られていなかった。フラーレンへのアルカリ金属インターカレーション反応の速度は大変遅く、Murphyらによれば35%の収量を得るのに23日間かかっていた。我々は、作成プロセスにおいてナノ空孔を導入したFNFを用いて1日で80%以上の収量を得てきた。しかしながら、固相反応によるアルカリ金属のインターカレーションの反応速度を上げるには、上記空孔を導入しただけでは不十分であると考えた。電着という液相反応によって行う超伝導化のための基礎研究として、アンモニア法によるアルカリ金属のインターカレーションの研究を行った。そのために、我々はSUSチューブ、真空ポンプ、冷却部、スエジロック、圧力計を組み込んで、高圧ガス対応の真空ラインを作製した。また、反応を目視することが重要と考え、SUSパイプ、オーリング、ガラス管、クイックカップリングを加工しつつ、ガラス管の内部反応が見える反応容器を作製し、アルカリ金属とFNFの反応の色を目視によって確認することができた。こうして、合成されたアルカリ金属(K、Rb等)ドープFNFは、残念ながらこのままでは超伝導を示さなかった。しかし、例えば150℃以上の状態を数十秒~数分間保持するだけの、短時間の簡単な加熱によってドラスティックに、超伝導を示すことが分かった。この反応は、固相のみで反応を進めた場合の数100~1000倍以上速いスピードで進むことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずは、初年度の研究として、これまで用いられてきた固相反応と、新規に行ったアンモニア溶媒を利用した方法による、K、Rb等のアルカリ金属のドーピング速度を研究するための実験設備のセットアップ(SUSを用いた高圧ガス・真空ライン)を行うことがでした。 この装置を使用したアンモニア溶媒を用いた予備的なアルカリドーピング試験と加熱を100℃~200℃で行ってきたが、アンモニア溶媒を利用した方法では、場合によっては100℃、200℃では1分以下の超短時間加熱でも、超伝導化することが可能ですることが分かった。 これらのことによって、溶媒を用いたドーピング反応の重要性を示すことができ、今後の研究の展開に対して、重要な知見が得られたといえる。 こうしたベーシックな研究は、今年度の研究に十分生かされると考えられるので、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針 ・アンモニア溶媒法+短時間加熱によって、合成した超伝導FNFの超伝導特性の評価を行う。 ・上記溶媒法によって合成されたFNFについては、線材化する上で需要な機械的特性を調べる必要があると考える。 ・アルカリ金属ドープFNFが、繊維状軽量超伝導線材の素材として利用可能かについて、シース等の金属材料との電気的コンタクトがうまくとれるかについても、研究を進めていく予定である。 ・アルカリ金属はFNFにインターカレートされた状態で、大気中で反応するかどうか、つまりアルカリ金属ドープFNFが大気中安定かどうかについて、あるいは、不安定ならばコーティングのような方法が有効かについても検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、予定していた国際会議に行くことができなくなったため、旅費分を使わずに繰り越しさせてきただき、次年度前半の国際会議にて発表予定で準備を進めている。
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