研究課題
本研究は高温超伝導線材間の極低抵抗接合の実現に向けて、ヘテロ接合界面の微細構造の解析により、接合メカニズムを解明することを目的としている。具体的には、応用が検討されているREBa2Cu3O7-δ(RE123、REは希土類元素)線材間の接合について、熱処理過程でのヘテロ界面における組織形成や、結晶成長、および金属不純物の超伝導相への拡散による界面の構造変化などの3つの要素を解析し、それぞれの要素が与える臨界電流や機械強度などへの影響について調査し、ヘテロ界面の形成原理と特性を明らかにすることである。初年度は計画とおり3つの要素の中でヘテロ界面の組織形成に着目した。ヘテロ界面は、Gd123線材間にYb123シート(多結晶)を挟んで分解溶融および成長させることで形成される。組織形成については、接合界面の観察による各種物質の分布構造、接合面積と割れ目の有無、および臨界電流への影響を調べ、新しい知見が得られた。接合界面の断面観察ではYb123とGd123が直接につながっている部分が小さく、それらの間に熱処理過程で液体になったBaCuO2(非超伝導)などが媒体となってつながっている部分が多かった。界面での非超伝導物質の形成は接合全体の臨界温度を降下させる影響がある可能性があり、これまで臨界電流が低かった要因の一つとして考えられる。Yb123シートと線材のGd123層間の接合面積は全体(Yb123シート面積)の80%程度と高くなり、十分に接合されていた。なお、接合体の剥離過程でYb123シートの内部が分割し、接合界面が剥離されないため、界面の機械強度は実用に十分であることがわかった。Yb123シードの内部組織には、通電時の電流方向に沿った数本の割れ目が観察されたが、線材への侵入がないことと、線材には割れ目が検出されなかったことから、線材の臨界電流への相関は極めて小さいと考えている。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していたYb123-Gd123間のヘテロ接合における組織形成の研究について、臨界電流と機械強度に関連ある次の要素についてすべて調べたため、おおむね計画とおり進めることができていると考えている。具体的には、接合界面の観察による組織構造、接合面積、割れ目の臨界電流への影響を調べ、さらに剥離強度についても知見が得られた。
現在までの進捗状況を踏まえ、おおむね順調に進展していることから、今後も計画とおりに進めていく予定である。今年度はヘテロ接合の結晶成長などの構造変化について調べる。
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