研究課題
本研究では、高温超伝導線材間の接合において、熱処理過程でのヘテロ界面における組織形成や、結晶成長、および金属不純物の超伝導相への拡散による界面の構造変化などを調べている。初年度(2018年度)は、ヘテロ界面の組織形成について研究し、2年度目(2019年度)では主に結晶成長について研究した。REBCO線材で希土類元素であるREは主にGdとYなど使用されている。このような希土類元素からとなるの超伝導は、バルクの結晶成長が速いが、希土類元素YbからとなるYbBCOは成長速度がGdBCOとYBCOに比べ、非常に遅いので、本研究ではヘテロ界面の付近のみを成長させることを考案した。実験結果からヘテロ界面では結晶成長が現れ、10分~1時間間の加熱による成長の厚さは1µm以下であると推測している。そのため、YbBCOをGdBCO線材間の媒体とする場合は、シート全体を成長させずに、界面のみを接合すればよいことがわかった。結晶成長の過程では、線材のGdBCO相が固体状態で、YbBCOの分解溶融状態(液体+固体)した混合物に接触し、新たなYbBCO相が成長する。このYbBCO相が接合界面になり、超伝導電流を担うので、超伝導電流密度を向上するには有効な接合面積を大きくする必要がある。ここで有効というのは、接合界面には超伝導になっていない部分もあり、超伝導電流を担う面積のことである。この研究では多くの試料を作製し、測定した結果、接合界面は線材長さ方向で適切な長さがあり、この適切な長さ以外では臨界電流が降下していることがわかった。その理由は、加熱時の温度勾配に起因するものであり、結晶成長はごく狭い温度範囲で進んでいることがわかった。その温度範囲は、920~940℃程度であると考えている。なお、同様な接合方法で、Bi2223高温超伝導線材間にBi2212を経由した超伝導接合にも成功した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していたYbBCO-GdBCO間のヘテロ接合における結晶成長の研究について、成長範囲と臨界電流およびその理由について多くの知見が得たため、おおむね計画とおり進めることができていると考えている。
現在までの進捗状況を踏まえ、おおむね順調に進展していることから、今後も計画とおりに進めていく予定である。今後はヘテロ接合において、金属不純物の超伝導相への拡散による界面の構造変化について調べる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Journal of Alloys and Compounds
巻: 806 ページ: 897-900
10.1016/j.jallcom.2019.07.331