本研究では計画とおりに、高温超伝導線のヘテロ接合界面における微細構造の解析と接合メカニズムについて調べた。研究の3年目は、ヘテロ界面の結晶成長と構造変化について調べた。 実験研究では厚さ50μmのYb123バルク(多結晶)を接合媒体として、Gd123超伝導線材を最高温度935℃程度で1分以内で接合した。線材のGd123層とYb123バルクの間には主にGd123-Yb123相を経由した結合組織が形成され、Yb123バルクにはYb211やBaCuO2や空洞などが形成される。本研究の接合方法は液相接合であり、接合過程でYb123から分解 されたBaCuO2液体は接着剤として接合界面の形成とYb123相の成長に不可欠である。また、空洞は酸素アニール時の時間短縮に有効である。接合界面の臨界電流はGd123-Yb123相 が接合界面全体に占める割合と、Yb123の結晶成長、および空洞の構造にも依存する。 さらに、線材のハステロイ基板側からの金属の拡散について、臨界電流に影響がある元素について調べた。その結果、接合界面にNiとMo元素が拡散されることが検出され、特にMo元素の拡散は超伝導電流に大きな影響を与え、接合界面の臨界電流を大きく降下させることがわかった。また、Ni層が含まれている線材の接合評価により、Ni元素の拡散は線材または接合界面に致命的な劣化を発生することではないと考えている。このような結果から、Mo元素の拡散を防止またはMo元素が含まれていない超伝導線材を使用することが、接合界面の臨界電流を向上できると考えている。
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