研究課題
本研究は、現在の炭素繊維強化プラスチック複合材料(CFRP)の力学的特性向上の停滞をブレークスルーするためには、「どのような物性を有する樹脂をCFRPのマトリックス材として選択すべきか?」の命題に対して明確な答えを提示することを目的として、破断繊維に隣接する炭素繊維表面の応力集中緩和を誘起するマトリックス樹脂を発見し,マトリックス樹脂のどの物性が支配因子であるかを明らかにすることを行うものである。炭素繊維が一方向に配向した一方向炭素繊維強化プラスチック複合材料の引張強度特性の支配因子である炭素繊維表面に発生する応力集中とマトリクス樹脂のき裂先端開口変位特性との関係に着目して、これまでに検討を行ったマトリクス樹脂種とは異なる力学的特性群に属するマトリクス樹脂を用いた相関性評価を行った。その結果、両特性の間に確認されている正の線形相関はマトリクス樹脂種に依存しない普遍性の高い現象であることを確認するとともに、低いき裂先端開口変位特性を有する樹脂をマトリクス材に用いることで、繊維表面に発生する応力集中の程度を低下させることができることを明らかにした。これらの結果は、マトリクス樹脂のき裂先端開口変位のパラメータであるヤング率、降伏応力ならびに応力拡大係数の実験的計測により、一方向CFRPの引張強度を高精度で予測することができることを示すのもである。これらの検討により、本研究の命題に対して、き裂先端開口変位特性が低い樹脂種を一方向CFRPのマトリクス材に用いることにより、一方向CFRPのさらなる引張強度特性の向上が達成できることを示すことができた。
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Composites Part A: Applied Science and Manufacturing
巻: 140 ページ: 106140~106140
10.1016/j.compositesa.2020.106140
http://www.yamamotolab.mech.tohoku.ac.jp/