研究課題/領域番号 |
18K04722
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
塩田 忠 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (40343165)
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研究分担者 |
生駒 俊之 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (20370306)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 炭化物薄膜コーティング / セラミック人工関節 |
研究実績の概要 |
本研究では,長寿命セラミック人工関節を実現するため,セラミック骨頭ボールとセラミックライナー間の摩擦摩耗低減を目指した炭化物セラミックコーティングの開発を目的としている. 前年度では,SiC薄膜コーティングによりタンパク質吸着量と細胞接着量が減少することを明らかにし,さらに,パルスレーザー堆積法により300℃でアルミナ基板上に製膜したSiC薄膜が,生理食塩水下で低摩擦・低摩耗であることを明らかにした.しかし,SiC薄膜コーティングは非常に剥離しやすいため,薄膜の密着性向上が急務の課題であった. そこで,本年度はSiC薄膜とアルミナ基板間に中間層を導入し,SiC薄膜コーティングの密着性向上を目指した.いくつかの材料を検討した結果,SiCの構成元素であるSiを中間層とすることにより,SiC薄膜コーティングの密着性が向上し,コーティングの寿命が大幅に改善することを見出した.しかし,Si中間層をSiC薄膜と同条件で製膜した場合,Siの融点がSiCよりも低いためにドロップレットが多数生成し,それによってSiC薄膜コーティングの表面粗さも大きくなり耐摩耗性に劣る結果となった.そこで,Si中間層とSiC薄膜コーティングをそれぞれ最適条件を求めて製膜したところ,SiC薄膜コーティングの表面粗さも大幅に改善できた. このSi中間層を導入したSiC薄膜コーティングとSiCボールの生理食塩水中における摩擦摩耗特性を測定したところ,摩擦係数は0.05程度となり,SiC単結晶やSi中間層無しのSiC薄膜コーティングの1/2程度,アルミナ基板とアルミナボール間の摩擦係数の1/5程度,という低摩擦を得た.また,比摩耗量はSiC焼結体よりも低く,SiC単結晶と同等であり,低摩耗を維持していた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,SiC薄膜コーティングの密着性向上が,最も重要な研究テーマであった.研究実績で述べたように,Si中間層がアルミナ基板上のSiC薄膜コーティングの密着性向上に有効であることを見出し,コーティングの寿命改善を達成した.また,密着性向上により,さらに低摩擦となる結果を得た.これらのことから,今年度の研究目的が概ね達成され,本研究は順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,これまでに得た知見に基づき,中間層の最適化を含め,膜厚方向に機能を傾斜させた積層薄膜コーティングを検討し,より優れたバイオトライボロジー特性を示すSiC薄膜コーティングの実現を目指す.
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