研究実績の概要 |
本研究は不斉触媒の開発および光学異方性に優れた複合材料の開発のために、らせん高分子基板の作製を行っている。既に研究代表者が予備的な結果を得ている高分子ブラシを用いる無機結晶の結晶成長制御の研究で得られた知見を基に(CrystEngComm. 2010, 2014, Polym. J. 2014)、この結果をさらに発展させた新しい光学活性有機/無機複合体材料の開発を、特に高分子合成に焦点をあてて行うものである。 本年度は主鎖に共役二重結合を有するらせん状ポリアセチレンを基板として用いるために、ポリフェニルアセチレンの新しい合成法を開発した。表面修飾ブラシの高分子基板を作製するためには、高活性な開始効率をもつ安定な触媒が必要であるが、これまでは報告例がなかった。 そこで、ロジウム錯体によるフェニルボロン酸の触媒反応に着目し、ポリアセチレン類のワンポット精密合成法の開発に成功した(Angew. Chem. 2020)。この新規合成法によって、これまで合成が困難であった両末端に任意の官能基を有するテレケリック型のらせん状ポリフェニルアセチレンを望みの長さ(分子量)に制御して合成することができるようになった。さらに本合成法は、基質適用範囲が広いため、様々な官能基を側鎖に有するらせん高分子を容易に合成することができる。2020年度に重合条件の最適化を行い、分子量分布1.02の極めて狭い単分散高分子を、末端官能基を様々に変えて合成した。例えば、末端に金基板と結合するSH基をもつ26量体を合成し、金基板上で自己組織化膜を形成したことを確認した。
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