研究課題/領域番号 |
18K04727
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
猿倉 信彦 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (40260202)
|
研究分担者 |
山ノ井 航平 大阪大学, レーザー科学研究所, 助教 (30722813)
清水 俊彦 大阪大学, レーザー科学研究所, 助教 (80415182)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | フッ素樹脂 / 小角X線散乱 |
研究実績の概要 |
現在、耐熱性、耐薬品性、撥水・撥油性や低摩擦係数など優れた特性を持ったフッ化物樹脂が開発されている。ポリマーアロイ(ブレンド樹脂)は、これらの特性を補完するように混合させたもので、特に苛酷な環境に対する耐久力を持つようになることが期待されている。本研究は小角X線散乱法と光散乱計測を組み合わせることで、ミクロからマクロな視点での構造解析を現在社会的に需要のある複雑なフッ化物ブレンド樹脂の開発・評価へ応用する。特に前例の無い構造解析と応力応答の同時計測が、中心課題である。具体的には既に実績のある構造解析システムに引張装置を導入し、引張強度による構造変化の過程を解析し、異方性の現れ方、応力との関係を解明することを目標とする。本研究により、成形加工品の製作条件の最適化、加工品の指標化に成功すれば、性能向上により世界中のあらゆる製品や工場などの長寿命化と安全・安心の向上、フッ素樹脂材料の用途の拡大が期待できる。 異方性と引張強度との整合性を取るため、X線解析機器内部に引張試験機を持ち込む設計を初年度に行っている。2019年度は、設計した遠隔操作が可能な引張試験機を放射光施設に持ち込み、引張応力下での小角X線散乱測定を実施した。対象としたフッ素樹脂は一般的なシート状の製品であるFEPとした。引張応力に応じて構造が歪み、不可逆に破壊される様子が小角散乱像として観察された。さらに、使用したシート状試料のX、Y方向のそれぞれでの引張で、異なる構造変化の挙動、破壊までの負荷応力の違いが観測されている。これはシート作成時の条件に由来していると考えられるため、材料研究者及び実験装置施設研究者とともに、試料条件と構造変化の議論を行った。 今後はポリマーアロイを対象とした同様実験、実際の圧電性などのデータとの相関を得る必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、放射光施設内に導入可能な装置の改良に関する仕様がフィックスするのに時間がかかり、充分な実験まで進まなかったが、本年度には放射光施設での実験を行うことができた。サンプルの特製と得られたデータの相関を取り、詳細な解析を実施できる段階まできた。
|
今後の研究の推進方策 |
新規開発中のブレンド品と従来品を比較して、引張強度と異方性の関係を明らかにし、新規材料の優位性を実証すると同時に小角X線散乱のその場計測による材料評価の定量的な指標を作る。②一般樹脂で得られた小角X線散乱での動的計測結果を元に、材料評価の指標化、ブラックボックスとなっている製造加工過程の状態を観測し、温度・圧力などの種々の加工条件の最適化を行う。 これらの目標が達成されれば、開発中の新規ブレンドフッ素樹脂材料の品質向上、コスト削減の観点で、実用化が可能かの見極めができる。また、既存材料に関しても、これまで経験からしか得られなかった知見をデータ化することで、新たな知財の権利化が可能となる。 実験としては以下の2点を中心に進める。(1)新規開発品樹脂の引張試験機を用いた小角X線その場計測:1000Nまでの引張強度でのデータ化を目指す。新規品と従来品の比較・引張強度と異方性の定量化を行う。(2)加工条件の最適化:200-300 ℃での材料の動的データ化を目指す。作成過程の動的観察・作成後の組成評価を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
残額を次年度物品購入に合わせて使用するため繰り越ししました。
|