研究課題/領域番号 |
18K04728
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
保田 和則 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (80239756)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | セルロースナノファイバー / 流動複屈折 / 高分子 / 繊維配向 |
研究実績の概要 |
セルロースナノファイバー(CNF)を強化材とした繊維強化複合材料の成形において,CNFの配向状態に対する高分子の影響を知ることは重要である。本年度は,その基礎的な研究として,CNFを水に分散させた流体にノニオン系の水溶性高分子を添加し,CNFの配向状態の変化について調べた。流れ場は,平行平板型レオメーターを利用した単純せん断流れ場とした。配向状態は複屈折値によって評価した。添加する高分子の複屈折値はCNFに比べて小さいことを事前に確認している。 せん断速度依存性について述べる。(1)せん断開始とともに複屈折値は急上昇した。この現象は高分子の有無に関わらず確認することができた。また,せん断速度が大きいほど複屈折値の値は大きくなった。これはせん断速度が大きくなったことにより,ファイバーのネットワークが大きく引き伸ばされ,それに呼応してファイバーもより多く同じ向きに配向したことが原因と考えられる。(2)高分子の分子量を変化させた場合,600万,1200万の高分子は複屈折値に影響を及ぼさず,1600万以上の高分子を含有させた場合に複屈折値が上昇する,即ち配向を促進させる。(3)配向角については,すべての試料流体において流れ方向に配向する。 温度依存性について述べる。(1)温度が高くなるほど複屈折の値が小さくなる,つまり配向の程度が小さくなるという傾向が見られた。これは温度が高くなると水分子の熱運動が活発化し,ファイバーに衝突することにより,ファイバーがランダム配向になろうとしたためであると考えられる。(2)高分子の分子量を変化させた場合,600万および1200万では複屈折値に変化は見られず,1600万では複屈折値が上昇した。(3)温度を変化させても配向角は流れ方向となり,高分子による影響はなかった。分子の熱運動による影響に比べ,せん断による影響の方がはるかに大きいためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CNFの配向状態を調べる研究についてはおおむね順調に進んでいる。また,複雑形状の流路内流れにおける配向状態の研究もおおむね順調に進んでいる。CNFの場合と比較するための,一般の高分子流体を同じ流路内に流したときの測定は終了している。
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今後の研究の推進方策 |
高分子はノニオン性のものが多いため,本年度は主としてノニオン性高分子を使用した。しかし,高分子の種類には,ノニオン性以外にアニオン性(負に帯電),カチオン性(正に帯電)のものがある。CNF自体は負に帯電しているので,CNFの配向に対するアニオン性,カチオン性の高分子の,CNFの配向状態への効果に注目し,それが,本研究の目的のひとつであるCNFの配向制御につながる可能性があると期待できる。そこで次年度は,アニオン性とカチオン性の高分子を用いて,CNFの配向状態を調べる研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
CNFを研究室で作成するための超音波ホモジナイザーの購入が遅れたため。流れの可視化のための高速度ビデオカメラは性能が日進月歩で進歩し,必要な性能のものが安価に購入できたため。
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