セルロースナノクリスタル(CNC)と呼ばれるナノサイズのセルロース粒子は、セルロース成分からなるナノサイズの異方性粒子であり、ナノセルロースの一つとして注目されている。このCNCを用いて、複雑な内部構造を有する構造体を創出することができれば、無害・安価で高機能性を有するソフトマテリアルの創出に繋がると考え、これまでに2種類のCNC複合粒子の作り分けに成功した。1つは、CNC成分がコア、高分子成分がシェルとなる粒子、もう一種は、高分子成分がコア、CNC成分がシェルとなる粒子である。 本年度は、これらの粒子に電場を印可し、電場によって粒子の配向性を制御できるかどうかを確認した。電場印可により、粒子の示す複屈折が若干ではあるが変化することから、電場によって複合粒子を操作できることが確認できた。さらに、自己組織化沈殿法で調製したこれらの粒子は、化学結合で各成分が結合しておらず、溶媒環境によっては、再度溶解する特性を持つ。そこで、今年度は、これらの粒子構造を固定化し、様々な溶媒へ再分散を可能とすることを目指し、両末端に重合可能な置換基を有する合成高分子を用いてCNC複合粒子を固定化することを目指した。結果的に、固定化自体は成功に至らなかったものの、両末端の置換基の影響により、これまでに得られていたCNC複合粒子とは異なるサイズ・形状の粒子が得られた。この粒子は、電場応答性が非常に明確であり、電場のON-OFFによる配向のスイッチングが可能な材料として有望であることが明らかになった。
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