研究実績の概要 |
本研究ではイオン伝導体の熱電材料としての潜在性を探るべくブリッジマン法で育成したBi-V-Oと固相反応法で作製したNa-Bi-Ti-Oについて熱電特性を評価した.また,応用展開のためモジュール化についても検討し,以下の知見を得た. Bi2(M,V)O5.5(M=Mo,Ti)は酸素雰囲気,Ptるつぼ中で結晶を育成した結果,良好な結晶が得られ,Moを0.2置換した試料のZTは900Kにて0.01と比較的高い値を示した.Ti置換試料の比抵抗は900K以下で一桁近く減少した.Na0.5Bi0.5TiO3の焼結時間は12hに短縮することができた.Srの置換サイトはNa,TiサイトよりBiサイトの方が適切であることがわかった.Mg置換,Sr置換試料はともに無置換試料より低い比抵抗を示し,出力因子は再現性を確認する必要はあるものの他の酸化物系で報告されている値の2桁ほど高い値を示し,有望な熱電材料であることが示唆された. 本研究で目指している高温大気中で安定な発電モジュール開発のために,高温大気中で安定な熱電材料であるFeSi2を用いてろう接の検討を行った.絶縁基板にAl2O3やMgOを用い,活性銀ろうを基板上に電極としてパターニングすることによって,絶縁基板と熱電材料をNi等の電極材料を介さずに直接接合し,熱電モジュールを作製できることがわかった.また,4対モジュールでの500℃耐熱試験において,Al2O3用いたモジュールでは64h後に接合部付近に亀裂が生じ大幅に出力が低下したが,Al2O3よりもFeSi2と熱膨張率の差が小さいMgOを用いたモジュールでは,256h後も出力の低下は僅かであり,亀裂等は観察されなかった. 本研究で開発した酸化物材料について,ようやく比抵抗低減の目処が立ったことから,FeSi2で検討した手法を用いて酸化物熱電モジュールを作製できると期待できる.
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