研究課題/領域番号 |
18K04734
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
平栗 健二 東京電機大学, 工学部, 教授 (60225505)
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研究分担者 |
馬目 佳信 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30219539)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DLCコーティング / 生体必須元素 / 動物実験 / 生体親和性 / Zn溶出 |
研究実績の概要 |
令和元年度では、「Zn溶出過程とその機序の同定⇒MEM-αでの元素構造分析結果との相関性確立」の実施および最終年度の研究計画としていた「金属含有DLCから生体必須金属イオンの生体内への供給過程の検証⇒動物実験により生物学的基礎データの収集」の予備的検討を目途とし、実験及び取得データの解析を行った。Zn- DLC(Diamond-like carbon)へZn含有量を制御性良く作製するために導入した特殊ターゲットスパッタを用いた。これまでの試験管レベルでの実験室レベル(in-vitro)成果をさらに検証するため、Zn-DLC/Tiインプラントを作製し、マウスを用いたin-vivo動物実験を実施した。Zn溶出量の測定には、各種の試料を用いてX-ray Photoelectron Spectroscopy (XPS)を用いて、試料中の残留Zn量から導出した。試料は、比較用標準試料、細胞培養液(MEM-α)を1wellあたり1mL加えた試料、MEM-αと共に細胞を播種した試料およびマウス内に固定した試料とした。各試料の深さ方向XPS分析によって、Zn溶出量機序モデルを構築した。 令和元年度の成果については、「生体内におけるZn溶出型DLC膜の骨形成促進効果」および「生体材料としてのZn-DLCの深さ方向におけるZn溶出特性」に関して、2件の研究論文、3件の国際学会(International Conference on Diamond and Carbon Materials、International Symposium on Engineering and Natural Sciences、International Conference in Asia 2019)、3件の国内学会(応用物理学会、日本生体医工学会、ダイヤモンドシンポジウム)での公表を行った(研究発表参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度においては、申請時の研究計画(平成30年度および令和元年度)に沿った実験およびデータの解析を行い、目標に設定していた成果が得られている。初年度は、特殊ターゲットスパッタ法の装置改良を実施し、亜鉛ドープダイヤモンド状炭素(Zn-DLC)膜の作製方法を検討した。そして、DLC内の含有Znを制御する手法の作製条件の調整を行った。Zn-DLCの作製条件を制御することで、DLC内に含まれるZn量を調整でき、培養液に浸漬した後の溶液からは溶出量の異なるZnが確認された。試料のXPS解析の結果からは、Zn-DLC内に存在するZnは、試料の深さ方向に対し、ほぼ均一に存在していることが解明できた。試料より溶出したZn量については、溶媒の環境によって変化することが示唆されていて、詳細な分析は令和元年度以降の計画に従って実施する予定となっていた。そこで、Znの溶出機序を明確にするために、2年目に当たる今年度は、Zn-DLC/Tiインプラント材をマウスの大腿骨骨折部に留置した。Zn溶出量の測定には、各種の試料を用いてXPSを用いて、試料中の残留Zn量から導出した。各試料の差分データより各試料の溶出Zn量を同定し、試料表面からのZn溶出機序モデルを構築した。 これまでの2年間の研究期間を通じて概ね順調に進行していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に記載した最終年度の研究目的である「金属含有DLCから生体必須金属イオンの生体内への供給過程の検証⇒動物実験により生物学的基礎データの収集」に沿った研究を実施する予定である。また、平成30年度および令和元年度に得られた成果に基づいた実験計画の一部追加を行う。既存の作製方法で合成したZn-DLCのZn濃度の解析結果から、バイオマテリアルとして最適な濃度分布を持つZn-DLCを確立する。動物実験としてマウスに留置したZn-DLC試料から体内に吸収されるZnについて解析する。試料の作製および分析から得られた結果と細胞実験から取得する成果を総合的に検証し、令和2年度の研究計画に還元する。今年度は、令和元年度後半より予備的に実施した実験である骨折治療用固定具を模擬した動物実験を本格的に進める。このために動物実験用マウス(JclBDF1:♂)を用いたZn-DLCの骨折治療効果を検証し、(Computed Tomography:コンピュータ診断CT)による観察、データの解析、骨折治療の成果の検証、血液中のZn濃度の解析等を実施する。それらの結果を総合的に考察することで、本研究テーマである「生体必須金属イオンを生体内へ供給する高機能バイオマテリアルの創製」の最終成果をまとめる。
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