WC-Co超硬合金のCoをTiNi形状記憶合金に置換し、TiNi合金の応力誘起相変態によるエネルギー散逸を利用した高靭性超硬合金の作製を目的とする。 市販のWC、TiおよびNi粉末をWC-40vol%TiNiとなるよう調整し、遊星型ボールミルを用いてエタノール中にて粉砕、混合した。この際、遊星型ボールミルの回転数、混合時間を調整することで、原料粉末が比較的均一に混合された粉末を得ることができた。これら粉末を通電焼結法を用いて固化成形を行いWC―TiNi超硬合金を作製した。焼結中に混合したTiとNiが反応しTiNiとなるよう、焼結条件を調整した。しかし、全てのTiおよびNi粉末が反応しTiNiを形成する条件を見いだすことが困難であり、Niの残留やTi2Ni金属間化合物の形成もあわせて確認された。この材料の3点曲げ強度を調べたところ約1.4GPaであった。 これら超硬合金を万能試験機を用いて3GPaの圧縮荷重を負荷した。この際、0→1→0→2→0→3→0 GPaとなるように負荷と徐荷を繰り返しながら段階的に荷重を増加させた。その結果、3GPaまで荷重を負荷した後、徐荷した場合、応力-歪曲線がヒステリシを示すことがわかった。このヒステリシスは、TiNiの応力誘起相変態に起因する可能性があと共に、ヒステリシスにより囲まれた分のエネルギーが熱エネルギーとして散逸されたことを示している。しかしながら、当初予想したヒステリシスの大きさに比べて、作製した試料のそれは小さかった。これは、作製したWC-TiNi合金では焼結によりTiとNiがTiNi単相とはならずNiおよびTi2Niも形成したため相対的にTiNi量が減少したためと考えられる。
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