研究実績の概要 |
超硬合金中のCoは従来と異なり、室温でfcc構造を示すことが知られている。また、このfcc構造はhcp構造へ応力誘起変態を示すことが知られており、このような相変態が超硬合金の高強度、高靭性化に寄与していることが示唆されている。そこで本研究では、応力誘起型相変態を積極的に利用することで超硬合金のさらなる高強度、高靭性化を試みた。 超硬合金の結合相に熱弾性型マルテンサイト変態を示すFe-Ni-C系合金を用いた。WC, Fe, NiおよびC粉末をWC-20 mass%(Fe-Ni-C)の組成となるように調整し、湿式混合した後、1673 K×1.8 ksで真空焼結を行い超硬合金を作製した。超硬合金中の総炭素量(WCのCも含む)を6 mass%とすることで、脆化相の形成を抑制でき、WCとFe-Ni-Cからなる2相合金となることがわかった。 また、総炭素量を6 mass%一定とし、FeとNiの組成比をFe(100-x)Nix, x=5, 10, 20および30と変化させところ、x=10の組成で超硬合金は最大強度を示した。その際の最大抗折強度は約4.5 GPaであり、従来の超硬合金に比べて高いことがわかった。また、ビッカース試験により付与した圧痕周辺のクラックを調査したところ、クラック長は非常に短く靭性も高いことが予想された。また、破断面のX線回折を行ったところ、最大強度を示したx=10の合金で、最も応力誘起マルテンサイトが形成されていることがわかり、マルテンサイト変態が高強度化に大きく寄与していることが示唆された。
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