研究課題/領域番号 |
18K04743
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
北條 智彦 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (50442463)
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研究分担者 |
秋山 英二 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (70231834)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水素脆化 / 残留オーステナイト / 熱間鍛造 / 超微細粒 / 機械的特性 |
研究実績の概要 |
昨年度に製造した熱間鍛造0.4C-TM鋼の微細組織観察を行った.熱間鍛造熱処理を施していないTM鋼はマルテンサイトラス母相を有し,残留オーステナイトはマルテンサイトラス境界に微細に存在した.熱間鍛造熱処理を施すことによって旧オーステナイト粒界が消滅し,マルテンサイトラスの長さ,幅が小さくなり,さらに組織微細化した. 熱間鍛造0.4C-TM鋼の水素脆化特性を評価した.応力負荷は,1200-1800 MPaの一定応力の定荷重試験,10×10-5 /sの低ひずみ速度での引張試験,および8.33×10-3 /sのひずみ速度での引張試験により行った.また,3% NaCl水溶液,または3% NaCl+5 g/L NH4SCN水溶液を用い,10 A/m2の電流密度で応力負荷前,または応力負荷しながら水素チャージを行った. 定荷重の水素脆化試験の場合,1500 MPa以上の負荷応力で3% NaCl水溶液で試験中に水素チャージを継続して行うと熱間鍛造熱処理の有無にかかわらずTM鋼は水素脆化を生じた.3% NaCl+5 g/L NH4SCN水溶液を用いて水素プレチャージをして低ひずみ速度,および従来のひずみ速度の引張試験を行うと,熱間鍛造熱処理を施していないTM鋼よりも熱間鍛造熱処理を施したTM鋼のほうが高い破断強度を示した.いずれの試験法で水素脆化特性を評価したTM鋼も試験片表面付近の析出物周辺で擬へき開破壊を生じ,その他のき裂進展部はディンプル破面であった. 超高強度低合金TRIP鋼の水素脆化特性は熱間鍛造熱処理によって改善されることを明らかにした.また,さまざまな試験法,水素チャージ法により超高強度低合金TRIP鋼の水素脆化特性を評価することにより,超高強度低合金TRIP鋼の水素脆化特性を適切に評価する試験法の提案ができると期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度までに熱間鍛造熱処理を施したTRIP型マルテンサイト鋼(TM鋼)を作製し,水素脆化特性評価を行った. 第一段階として,熱間鍛造熱処理を施したTM鋼の微細組織観察,および水素が関与しない場合の引張試験によって,TM鋼は熱間鍛造熱処理を施すことにより組織の更なる微細化と高強度,高延性化が達成されたことを明らかにし,自動車用鍛造部品への適用が期待された. 第二段階として,高強度鋼で新たに問題となる水素脆化特性の評価を行い,TM鋼は熱間鍛造熱処理によって耐水素脆化特性は改善されることを明らかにした.とくに,残留オーステナイトを含む低合金TRIP鋼の場合,残留オーステナイトのマルテンサイト変態を生ずるような試験法では,変態したマルテンサイトやマルテンサイト/母相界面でき裂発生が促進される可能性があるため,正確に水素脆化特性を評価することができないことが懸念される.以上のことから,定荷重試験法,低ひずみ速度引張試験法,従来のひずみ速度引張試験法などのさまざまな試験法や水素チャージ方法を検討し,TM鋼の水素脆化特性を最適に評価する方法も検討した. TM鋼の水素脆化特性に及ぼす熱間鍛造熱処理の影響を調査するとともに,水素脆化特性評価方法の検討も行い,当初の研究計画のとおり,順調に研究が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はTM鋼の水素脆化メカニズムの解明,水素脆化抑制メカニズムの解明を行う.TM鋼の水素脆化メカニズム解明のため,水素脆化破面の詳細観察,表面き裂観察,縦断面き裂,ボイド発生,進展挙動の観察等を行う.これらの解析により,水素脆化き裂発生,進展挙動を明確にし,TM鋼の熱間鍛造熱処理による水素脆化挙動の変化を明らかにする.さらに,水素脆化試験時の残留オーステナイトのマルテンサイト変態挙動を明らかにするために水素脆化試験前後の残留オーステナイト特性(体積率と炭素濃度)のX線回折測定を行う. 微細組織の詳細な解析も継続して行う.微細組織のSEM観察,SEM-EBSD解析によって詳細に微細組織の解析を行う.マルテンサイト母相形態,残留オーステナイト形態を詳細に解析し,熱間鍛造熱処理による組織微細化メカニズム,残留オーステナイト特性改善機構の解明を行うとともに,水素脆化挙動と微細組織の関係を明らかにして,水素脆化を生じない微細組織制御の指針を提案する.
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