研究代表者はこれまでに、主鎖がパーフルオロアルキル基とベンゼン環のみから成るスルホン酸化ターポリマー(SPAF-MM)膜が、低いガス透過性、高湿で高いプロトン伝導性、Nafionを含む触媒層との良好な界面適合性を示すことを見出している。しかしながらSPAF-MMの分子構造において、親水部であるスルホフェニレン基の連続性(あるいはブロック性)が低く、特に低湿での低いプロトン伝導性(ゆえに低湿での低い燃料電池特性)が課題であった。 本年度は、この課題を克服するべく、スルホフェニレン基の連続性を高めたスルホン酸化コポリマー(SPAF-QP)膜を設計した。具体的には、使用するモノマーとして、SPAF-MMの場合はパーフルオロアルキルモノマー、m-フェニレンモノマー、p-フェニレンモノマーであるのに対し、今回新しく設計したSPAF-QPの場合はパーフルオロアルキルモノマー、キンケフェニレン(5つのフェニレンが連結した)モノマーとすることで、親水部のブロック性を高めた。作製したSPAF-QP膜の親水部ドメインサイズ(約2.6 nm)は、SPAF-MM膜(1.6-2.0 nm)と比較してより大きく、発達したミクロ相分離構造を有することが確認された。SPAF-QP膜は80℃・幅広い湿度下においてSPAF-MM膜よりも高いプロトン導電率を示し、20% RHという低湿環境下においても高い値(6.9 mS/cm)が観測された。その結果、80℃・30% RHにおいても、SPAF-QP膜はベンチマーク膜であるNafion膜と同程度の高い燃料電池特性を示し、本分子設計指針が有効であることが明らかとなった。
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