研究課題
2019年度は、第一原理計算を用いて高い熱電特性が期待されるフルホイスラー化合物およびハーフホイスラー化合物の探索を行うとともに、候補化合物の合成を試みた。以下に代表的な研究成果について記述する。(1)機械学習を用いた低熱伝導率ハーフホイスラー化合物の探索ハーフホイスラー化合物は熱電性能として高い電気出力密度を有しているものの、高い結晶対称性に起因した高熱伝導率の低減が性能向上の課題となっている。そのため、ハーフホイスラー化合物を用いた更なる新規熱電変換材料を実現するには、低い熱伝導率を有するハーフホイスラー化合物を中心に熱電変換材料の可能性を探索することが必要である。そこで、本研究では、様々なハーフホイスラー化合物において、第一原理計算によって算出された熱伝導率に対して、構成元素の原子情報のみをもとに機械学習による熱伝導率予測が可能かを検討した。その結果、ハーフホイスラー型結晶構造における各サイトの原子半径および原子質量のみの情報から熱伝導率を高精度で予測できる機械学習モデルの構築に成功した。特にYNiBi系などのY系ハーフホイスラー化合物においては、希少元素の置換無しでZr系ハーフホイスラー化合物よりも低い熱伝導率が期待できることを明らかにした。(2)低熱伝導率Y系ハーフホイスラー化合物の合成条件の探索機械学習により低熱伝導率が期待されるY系ハーフホイスラー化合物の合成条件の探索を行った。Y系ハーフホイスラー化合物は、Zr系ハーフホイスラー化合物の合成条件とは大きく異なり、アーク溶解による予備溶解および適切な焼結温度・時間・圧力、および規則化焼鈍を選択することにより、単相に近い試料を合成できることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
2018年度に確立したホイスラー化合物における熱伝導率計算を2019年度には更に発展させ、機械学習を用いた熱伝導率の予測アルゴリズムの開発することができた。また、将来、有望な材料群において実際に試料の合成を開始し、幾つかの系においては材料合成条件の決定まで行うことができた。そのため、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
合成に成功した試料に対して、元素置換および非化学量論組成によるキャリアードーピングを行うことにより、n型およびp型熱電特性の向上を試み、従来の熱電変換材料よりも高性能な化合物の合成を試みる。また、熱電モジュール化を進めることにより、熱電特性のサイクル特性、耐酸化性などのモジュールにおける特有の課題の洗い出しも進める予定である。上記の2課題について、優先して進めることにより、本研究課題の目標を達成を試みる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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