研究課題/領域番号 |
18K04749
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
園山 範之 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50272696)
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研究分担者 |
今西 誠之 三重大学, 工学研究科, 教授 (20223331)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 層状複水酸化物 / 酸素欠陥 / バンドギャップ / SPR-KKR / XAFS |
研究実績の概要 |
Mg-Al酸化物固溶体を還元焼成する時に、酸素脱離・電子導入を誘起し、本来絶縁体であるMg-Al酸化物に導電性を付与させる。 この材料の電子、電気化学材料への展開を目的として本年度は以下の様な研究を行った。 1.Mg-Al LDH焼成体の構造の解析および酸素の電子状態を調べる為に酸素K端のXAFS測定を行った。MgとAlの組成を変化させて合成した試料では、XRDパターンには変化が見られなかったものの、ピーク位置がアルミニウム濃度の増加と共に低角側にシフトし、固溶体の形成を示唆した。また、TGの測定結果では、真空下で測定した系の方が大きな質量減少を示したことから焼成中の酸素脱離量が焼成雰囲気により影響を受けることが示唆された。酸素K端のXAFSでは、吸収端付近530 eV近くの吸収が変化し、真空焼成の試料に特有の吸収肩が現れた。この現象は焼成により酸素の電子状態が変化していることを意味している。 2.Mg-Al LDH焼成体の電子状態計算:上記の結果から得られた示唆を確認する目的でMg-Al LDH焼成体の電子状態計算を行った。Mg-Al LDH焼成体は、岩塩という シンプルな構造を有しているが、カチオンサイトにはMgとAl、さらに陽イオン欠陥がランダムに分布している。前年度同様、固溶体計算を精密に行うことが出来るSPR-KKR法を用いて計算を行った。その 結果、MgOにアルミニウムを導入するとバンドギャップが大きく減少することが確認できた。この状態から更に酸素欠損を導入してゆくと、不純物準位が形成されていった。このバンドギャップ変化は前年度測定した吸収スペクトルの変化とよく一致し、定性的に実験結果を説明することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は昨年度の計画通り、組成を変えた試料について合成と測定を行うことが出来、またXAFSを用いて酸素の電子状態変化を確認することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画にある様々な組み合わせの二価イオン(Ca, Sr, Ga, Zn,)、三価または四価イオン(Ti, Y)を用いてLDHを作成し、還元焼成により酸 素脱離可能な試料の探索を行う予定である。また、XAFSに関しては酸素だけで無く、Mg、Al K端での測定を行い、試料の電子状態について詳細な測定を行ってゆく。 また、結晶中の酸化物イオン、プロトン等のイオン導電性特性も評価してゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は量子化学計算を主に行い、次年度に構成金属を変えた合成及び特性評価を行う。そのため次年度は、今年度以上試薬・器具等の予算が必要であるため、今年度の予算を次年度に繰り越した。
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