研究課題
Mg-Al酸化物固溶体を還元焼成する時に、酸素脱離・電子導入を誘起し、本来絶縁体であるMg-Al酸化物に導電性を付与させる。 この材料の電子、電気化学材料 への展開を目的として本年度は以下の様な研究を行った。1.昨年までに行ったMg-Al LDH焼成体の構造の解析および酸素の電子状態を基に、Mg-Al LDH焼成体の酸化物イオン導電性の調査を行った。LDHを400から600℃で焼生後、成形して、常温から800℃での導電率を検討した。200℃以下の低温領域では、高い導電性を示すものの、時間と共に導電率が減少したため、低温領域での導電性は焼成体が大気から吸収した水分に由来するものと考えられる。高温領域でも低いながらも導電性は観測されたため、酸化物イオン導電性を有している可能性はあるが、焼結性が低く、密度の高い試料が得られないことから、燃料電池電解質への応用は困難であると思われる。2.LDH焼成体の電子状態計算:昨年行ったMg-Al LDH焼成体の電子状態計算に引き続いて、Ni-Al LDH焼成体の電子状態検査を行った。LDH焼成体は、岩塩という シンプルな構造を有しているが、カチオンサイトにはMgとAl、さらに陽イオン欠陥がランダムに分布している。前年度同様、固溶体計算を精密に行うことが出来 るSPR-KKR法を用いて計算を行った。その 結果、昨年のMg-Al LDHではMgOにアルミニウムを導入するとバンドギャップが大きく減少することが確認できたが、Ni-Al LDH焼成体では、アルミニウムを導入してもバンドギャップの変化は観測されなかった。これは、紫外可視吸収測定によるバンドギャップ測定の結果とも一致している。以上の結果より、岩塩型金属酸化物へのアルミニウム導入の効果は、母体の金属イオンの種類に依存することが明らかになった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Applied Clay Science
巻: 186 ページ: 105440-105444
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Radiation Physics and Chemistry
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