研究実績の概要 |
5種類以上の合金元素をほぼ等量ずつ配合することで作製されたハイエントロピー合金は、面心立方(FCC)・体心立方(BCC) といった単純な結晶構造を有する高濃度固溶体を形成し、鋳造ままでも高強度・高延性を示す新金属材料である。しかし、その開発は単純な経験則に基づくパラメーター法を用いた絨毯爆撃的実験が中心であり、これまで蓄積・構築されてきた熱力学データベースや計算科学に基づく開発がなされていないのが現状である。 本研究では、生体用ハイエントロピー合金(High Entropy Alloys for metallic Biomaterial, BioHEA)として開発がすすむTiNbTaZrMo生体ハイエントロピー合金の凝固組織を、液相線温度および液相線温度における分配係数の熱力学計算結果と比較を行い、等軸デンドライト組織における元素分配が、熱力学計算結果によりよく説明できることを明らかとした。凝固現象に注目した熱力学計算をもとに、非等原子組成比Ti1.4Zr1.4Nb0.6Ta0.6Mo0.6合金を開発し、等原子組成合金に比べ優れた機械的性質を示すこと、細胞試験の結果からCP-Tiに匹敵する高い生体適合性を示すことを明らかとした。さらに、本研究により開発された、経験的パラメーター・第一原理計算データベース・熱力学計算を融合させた、まさに超多成分系合金・マテリアルDXともいうべき手法による合金設計が、様々な超多成分ハイエントロピー合金や金属ガラスの開発にも応用可能であることを実証した。
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