研究実績の概要 |
Fe-Cr-B三元系において,示差走査熱量測定により液相が関与する相境界,および合金法を用いて950℃における相平衡を明らかにした.950℃における相平衡については,ホウ化物への第三元素の固溶度など,これまでに報告されている別の温度における相平衡と良い一致を示した.一方,液相が関与する相平衡については報告例がなく比較できないのが現状であるが,これまで報告されている計算状態図の結果との不一致が見られ,液相の熱力学パラメータの修正の必要性が示唆された.CALPHAD(Calculation of phase diagrams)法に基づき,実験結果およびM23(B,C)6(M: Cr, Mo, Nb, Ti, V)を構成するいくつかの準安定ホウ炭化物の生成エネルギーの第一原理計算結果を用いて熱力学的解析を行った.得られた熱力学パラメータを既存のデータベースに追加し,Hillertの平行接線則を用いたFe-M-B-C系の粒界偏析挙動の評価およびDavies-Uhlmannの速度論的取扱いによる粒界析出挙動の評価を行った.オーステナイトにおける粒界偏析については,TiやNbはBと共偏析する傾向が見られたが,Cr,MoおよびVは共偏析の傾向はみられなかった.定性的には,共偏析の傾向は合金元素とBとの相互作用の大小が関係しており,各合金元素のホウ化物形成傾向と符合すると考えられた.粒界析出についてはまだ予備的な計算段階ではあるが,M23(B,C)6の析出のノーズの位置は合金元素の種類により変化することが確認できた.
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