研究実績の概要 |
本研究の目的は、希土類元素添加Mg合金に対して安全性を確保する不燃性のみならず溶湯の健全性をも保つ高次不燃性付与技術の確立を目指す。より具体的には、均質かつ緻密な保護酸化皮膜の形成によって希土類の内部酸化を抑制するMg合金成分設計の指針を確立する。平成31年度では、(1)「内部酸化抑制効果を持つ第四元素の探査」、(2)「機械的特性と不燃性を両立する合金成分設計」を行なった。 (1) 内部酸化抑制効果を持つ第四元素の探査: 昨年に引き続き、Beのように粒界に濃化する元素をMg-Zn-RE (RE = Y, Gd)合金に添加することで内部酸化抑制する元素や、最外層に保護的な酸化皮膜を新たに形成する元素の探査を行った。酸素との親和性が高いCaやYbを添加することで、 最外層に新たな保護皮膜を形成し、内部酸化の発生を抑制した。また、Mg-RE(RE=La, Ce, Pr, Sm, Gd, Y, Tm, Dy, Ho, Yb)合金にBeを添加することで内部酸化が抑制されることが明らかとなり、Be添加が希土類元素全般において、効果を発揮することが明らかになった。 (2)機械的特性と不燃性を両立する合金成分設計: Mg-Zn-Y合金にCa、YbおよびBeのいずれかを添加することでMg-Zn-Y合金の難燃性が向上した。しかしながら、これらの元素がMg-Zn-Y合金の機械的性質に及ぼす影響については、不明な点が多い。Caは1at%添加することで難燃性が著しく向上したが強度の低下を招いた。これは、Ca添加によって強化相である LPSO相の体積分率が減少したためと考えられる。一方で、微量添加で難燃性が向上するBe、Yb添加合金では、降伏強度および延性の向上した。Mg-Zn-Y合金の組織観察を行った結果、結晶方位がランダムである動的結晶粒の微細化により、降伏強度と延性が同時に向上したと考えられる。
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