研究課題
本研究はマグネシウム-イットリウム(Mg-Y)基希薄固溶体合金において変形時に導入される特異な階段形状を持つc転位の導入起源の解明と,これら階段状c転位を用いた強化の可能性を検討するものである.2023年度では,階段状c転位による強化能をTEM組織から見積ったピン止め力とクリープ負荷応力の関係を引き続き検討した.検討の結果,無負荷の状態ではc転位が安定な温度である450Kでのクリープにおいて,クリープ応力が階段状c転位のピン止め力を大幅に越える条件では,両者のクリープ強度はほぼ同じである一方,階段状c転位のピン止め力以下である100MPa近傍でのクリープ条件では,変形のごく初期段階を除き,予ひずみ材の強度は溶体化処理材に比べ低下すること,予ひずみ材中のc転位密度はクリープ開始後48時間以内に急激に低下し,底面aすべりに対する障害物としての効果はほとんど見出せないことから,研究開始当初予想していた林転位強化は見込めず,階段状c転位はむしろ弱化の要因として作用していることが明らかとなった.また,階段状c転位の転位密度の減少はクリープ応力の増加すると顕著となり,予ひずみ材と溶体化処理材とのクリープ速度比も大きくなること,更にクリープ中のa転位は底面すべりが中心であるものの,部分的に非底面上を活動するa転位が認められたことから,階段状c転位とa転位が反応してa+c転位となり,c転位密度の低下と転位組織の回復に寄与している可能性が強く示唆された.一方で,今年度の検討ではc転位密度の著しい減少が生じたクリープ後の試料内部にa+c転位はほとんど確認できなかったことから,再結合したa+c転位の運動様式の解明には至らず,今後の検討課題となった.
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MATERIALS TRANSACTIONS
巻: 63 ページ: 408-414
10.2320/matertrans.MT-MA2022008