本研究は、水素社会の実現に不可欠な水素を精製するために、高分子鎖を弦鳴楽器のハープの弦の様に一定間隔で配列させ、弦(高分子鎖)の間を水素分子のみをふるい作用により選択的に透過・分離させる革新的水素分離膜を創製し、その新規分離機構の解明と分離性能の最適化を行うことを目的とする。ポリイミドとメタクリル酸誘導体から成るABA型ブロックコポリマーのA成分のナノ自己組織化作用をハープの両端の棹の固定方法として利用して、B成分の高分子鎖をハープの弦の様に配列させることを特徴とする。 本研究は3年計画であり、3年目である2020年度で終了する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け研究期間の延長となった。本研究課題は当研究室で新たに試作した実験装置を用いている。同装置の停止期間が長く、再稼働のためのメンテナンス等に多くの時間を割かれた。また本研究課題は高圧ガスを用いる上に連続測定が求められるため、研究室内の安全管理面の環境整備の再構築を行う必要もあり、十分に実験を進めることはできなかった。そのため2024年3月31日までの研究期間の再延長となった。 2023年度に実験装置を再稼働することができた。そしてA成分のメタクリル酸誘導体の化学構造を変えていくつものABA型ブロックコポリマーを合成し、作製した膜に対してガス透過係数とガス分離係数を測定した。ブロックコポリマー化によりガス分離係数は増加したが、本研究で目標とした特性は得られなかった。膜の構造解析から膜平面に対しナノスケールでの理想構造の構築が均一になされていなかったことが判明した。自己組織化と高次構造の制御を点検し、膜平面に欠陥部分が形成されない製膜方法を検討したが研究期間終了までに完全な形の膜を得ることができなかった。膜の改善がみられていることから、次年度以降は校費等を活用して本研究を継続していく。
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