研究課題/領域番号 |
18K04759
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
和田 憲幸 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30342504)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リン酸塩ガラス / マンガンイオン(II) / 赤色蛍光 / 蛍光体 / 低融点 / 発光ダイオード |
研究実績の概要 |
60P2O5-35ZnO-5Al2O3-xMnOおよび60P2O5-(35-y)AmO-yXmO-5Al2O3-8MnOガラス(モル比,x = 0~20,AmOおよびXmO:Li2O,Na2O,K2O,CaO,ZnO,SrO,BaO)を溶融急冷法によって作製し,吸収,蛍光および励起分光特性,および量子効率を測定することで,次の結果を得た.60P2O5-35ZnO-5Al2O3-xMnOガラスでは,Mn2+の4T1g→6A1g遷移に従った赤色蛍光バンドの強度は,Mn2+の4A1g、4Eg←6A1g遷移に従った励起バンドを409 nmで励起することで最も強くなり,Mn2+の添加量xが8~10のときに最大になり,その蛍光バンドの半値幅はxが小さいほど大きいことから,x = 8が最適と決定した.60P2O5-(35-y)AmO-yXmO-5Al2O3-8MnOガラスのMn2+とMn3+の吸収バンドの積分強度比,Mn2+の赤色蛍光バンドの蛍光波長,積分強度および半値幅,および量子効率を組成から計算できるパラメーターによって整理した結果,AmOおよびXmOにK2OおよびSrOを用いたガラスを除き,Mn2+のままであり,塩基度が低いガラスほど赤色蛍光波長は短波長化し,その半値幅は広くなり,量子効率も向上した.最終的に最も強い赤色バンドを示す60P2O5-35ZnO-5Al2O3-8MnOガラスの内部量子効率は,6.2%で,最適なベースガラス組成とした.これに基づき60P2O5-35ZnO-5Al2O3-8MnO-yCu2Oガラスを作製した結果,1250 ℃,90 min溶融した60P2O5-35ZnO-5Al2O3-8MnO-0.1Cu2OガラスはCu+濃度が最も高く,275 nmのUV光の下でCu+からMn2+へのエネルギー移動によって最も強いMn2+の赤色蛍光を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
作製した60P2O5-35ZnO-5Al2O3-xMnOおよび60P2O5-(35-y)AmO-yXmO-5Al2O3-8MnOガラスの吸収,蛍光および励起分光特性および量子効率の評価から,Mn2+の4T1g→6A1g遷移に従った赤色蛍光バンドの強度,半値幅等を,MnOの添加量およびホストガラスの陽イオン半径および価数から計算できる塩基度と比例する組成パラメーターで整理することで,赤色蛍光バンドの強度と半値幅がMnO添加量xが8(モル比),低い塩基度のホストガラスのときに最大になることが分かり,最も強く,幅広い赤色バンドを示す60P2O5-35ZnO-5Al2O3-8MnOガラスが最適なベースガラス組成であることが早い段階で見出せた.また,作製したガラスにおいて,Mnの価数変化が特別な組成でない限り起こらず,リン酸塩ガラス中では目的の赤色蛍光バンドを発現するMn2+で固定化されることが分かった.そのため,次の段階である紫外励起できる賦活助剤Cu2Oを添加したガラス(60P2O5-35ZnO-5Al2O3-8MnO-xCu2Oガラス(x = 0-1.00))を大気中,1200~1400℃,30~180 minの溶融急冷法で作製し,Cuの酸化還元および蛍光特性を調べることができた.これから得られた結果については,紫外光励起によって強い赤色蛍光を発現しないMn2+を,紫外光励起によってCu+を励起し,Cu+からMn2+へのエネルギー移動させることによって強い赤色蛍光を発現させることができたため,先行して論文を作成し,Journal of The American Ceramic Societyに投稿し,掲載確定まで進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
当初,平成31(令和1)年度には,30年度に最適化した60P2O5-35ZnO-5Al2O3-8MnOガラスを基にし,紫外励起できる賦活助剤Ag2O,Cu2OおよびSb2O3 を添加または置換したガラスを溶融急冷法によって作製し,研究を進める予定であったが,すでに先行してCu2Oを添加したガラスについては,論文投稿まで終えている.そのため,本年度は,賦活助剤のAg2OおよびSb2O3 を添加または置換したガラスを溶融急冷法によって作製し,Ag-Ag+およびSb3+-Sb5+の酸化還元状態を,ガラスを吸収,励起および蛍光スペクトルを測定することでAgナノ粒子のプラズモン共鳴バンドおよびAg+,Sb3+およびSb5+の吸収バンドの強度から,これらの酸化還元の有無をしらべ,溶融条件等において酸化還元がある場合には,それらについて溶融条件や明らかにする.また,紫外励起下によるMn2+の赤色蛍光バンドの蛍光波長,蛍光強度(量子効率)および半値幅を蛍光および励起スペクトルと量子効率測定装置から調査する.これらから,Mn2+の赤色蛍光を高輝度化する最適なAg2OおよびSb2O3の添加量または置換量および溶融条件を明らかにする.令和2年度には,上述で最適化したガラスを基にして低融点化剤として働くMmOおよびその添加量または置換量を変えたガラスを溶融急冷法によって作製し,上述と同様にMn2+の赤色蛍光バンドの特性を評価するとともに熱重量示差熱分析によってガラス転移点(Tg)を,赤外吸収分光法およびラマン分光法によってP-O-P結合(架橋酸素)やP-O-(非架橋酸素)等の吸収バンドの強度比等からガラスの構造変化を調査し,Mn2+の赤色蛍光特性を保持して低融点化できるガラス組成とそれらの原因を明らかにする.
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