本研究では、世界的に最も普及しているソーダライムガラスに対し、微細な屈折構造を形成し、光学機能を付与する技術の研究を行っている。一般的に、微細な構造を形成するための透明材料としては、ポリマー等の熱可塑性材料が主流となっているが、物理的・化学的に安定するガラス材料へ構造形成することで、様々な環境において長期的な運用を可能な素子へと応用できることが期待される。本研究は4年間での遂行に向け、 ・電圧プリント法の確立 ・選択堆積法の発展 ・微細屈折構造の光学機能計算・実装・評価 の3点に着目した研究を計画した。 3年目となる2020年度は、電圧プリントによる構造転写と、その表面を選択堆積法により構造化する実験を主体とした研究を計画していたが、実験可能な時間が制約され、一部の実験に留まった。この中で、電圧プリント法を用いた実験では、用いる電極とサンプル間の距離に応じて処理結果に大きな違いが出ることが分かった。また、選択堆積法を用いた構造形成実験も実施予定だったが、年度内には十分な条件最適化には至らなかった。実験を進められない期間には、計算機上での光学シミュレーションを実施した。透明媒質表面の屈折構造について知見を得るため、透明な海洋生物であるクラゲの表面微細構造をモデル化し、厳密結合波解析を用いた計算を行った。また、研究成果はオンラインでの学会にて発表を行い、更に論文の執筆を行った。4年目の最終年度を前に、本研究を応用に向けて発展させるため、「最終年度前年度応募研究課題」として新たに採択された。
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