研究課題/領域番号 |
18K04767
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉年 規治 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (60586494)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 無容器凝固 / 急冷凝固 / アモルファス / 軟磁気特性 |
研究実績の概要 |
平成31(令和1)年度は、意図的な強制核発生事象として「超音波照射による摂動」を加えることで、人為的にアモルファス母相中に高密度のナノ結晶核を均一分散(ナノヘテロ化)させることが可能かどうかの確認を中心とした実験を行った。 まず、Fe76Si9B10P5金属ガラスの緩和機構の評価として、動的粘弾性測定を行い、ガラス転移温度付近(約800 K)において、β緩和を励起させる周波数は10^3~10^4 Hz程度であることを明らかにした。そこで、Fe76Si9B10P5合金と(Fe76Si9B10P5)99.75Cu0.25合金について、液滴の急冷凝固過程において1~2×10~4 Hzの周波数の超音波を照射し、過冷却状態にある金属ガラス内部にβ緩和を引き起こし、ヘテロアモルファス構造を形成させることが可能かどうかの確認を行った。その結果、超音波の照射下で作製した2種類の合金粒子は未熱処理の状態であるにも関わらず、すでにナノヘテロアモルファス構造を形成している可能性がTEM観察により明らかとなった。また、超音波照射下で作製した粒子は、照射しない場合と比較して高い飽和磁束密度の値を示すことがVSM測定により明らかとなった。特に、(Fe76Si9B10P5)99.75Cu0.25合金については、As-Q状態(未熱処理状態)で1.85 Tと非常に高い飽和磁束密度の値を示した。これは過冷却液体に超音波を照射することで、β緩和が励起され、アモルファス相中に、数百個以下程度のFe原子が集まって構成するようなα-Fe結晶相の前駆体(ナノヘテロアモルファス構造)が生じた可能性があると考えられる。 これらの結果は、高効率軟磁性粉末として工業的応用が期待できるため、量産可能なガスアトマイズ法を用いた粉末作製技術開発についても着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画より早い段階で、飽和磁束密度の上昇に成功し、また内部のTEM観察にも成功した。さらに工業的応用を見据えた量産技術に関わるところにまで着手することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2種類の合金について、超音波を照射したサンプルの熱処理を行い、さらに高い飽和磁束密度を達成することが可能かどうかの検討を行う。その後、内部の組織観察を行い、プロセス条件と組織および磁気特性の関係性について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験消耗品および成果発表にかかる経費(旅費や印刷費)として使用する予定
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