研究課題/領域番号 |
18K04769
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
岩本 知広 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (60311635)
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研究分担者 |
永野 隆敏 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 講師 (70343621)
篠嶋 妥 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (80187137)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超音波接合 / 粒子法 / 透過型電子顕微鏡 / その場観察 |
研究実績の概要 |
透過型電子顕微鏡その場観察実験において試料に繰り返し応力を加える手法自体は申請者が開発済みであるが、実際には手技に難しいプロセスが多く実験を成功させるためには大変な手間と時間が必要になる。本申請で必要な実験手法を新たに確立するためには、従来の手技に改良を加え効率的に実験を進めるための基盤技術の検討・開発が重要である。本申請で用いる試料は透過型電子顕微鏡観察のために非常に薄く加工されている。このため透過型電子顕微鏡観察ホルダーに取り付ける際に試料に余計な応力がかからないよう特別な工夫が必要である。2018年度は、これを効率よく達成するためにホルダーの部品位置、試料取り付け部の剛性の確保などの改良を行った。また従来、電子顕微鏡で観察しながら試料位置を大きく動かす場合にホルダーの仕様上、観察を中断し試料をホルダーに取り付け直す必要があった。これが実験の効率を大きく損ねていたが、本ホルダーでは観察中に大きく可動が出来る機構を組み込んだ。ホルダーは新たに改良箇所を含めて全体を設計し直し実際に試作することが出来た。2019年度以降、実際にこのホルダーを稼働させ実験を進めていく予定である。 シミュレーションについては粒子法を超音波接合に応用し、ある特定の表面粗さを持ったアルミニウム板同士を接合した時の熱発生の状態を可視化することができた。特に振動中に表面の凸部同士が接触した時に温度が上昇し離れた時に低下する現象や、板同士の接触量を増加させた時の局所的な温度上昇などが明らかになった。本シミュレーションでは通常の有限要素法では表現することが困難な、空隙などの材料不連続部を含めた加工時における熱発生、温度分布についての計算を行うことが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は実験において検討すべき課題について細かく分析した結果、透過型電子顕微鏡観察ホルダーの設計については従来想定したものに対して、新たな機構を組み込んだ方が実験効率が大幅に上がることが見込まれた。この機構の変更に伴う新たな設計、ホルダー各部の再作成に時間を要したため、ホルダーを作成することは出来たものの実際に新たなホルダーを用いた実験が出来なかった。そこで進捗状況区分としてはやや遅れているとした。しかし作成された新ホルダーは現在まで開発されてきた様々な技術が取り込まれており、2019年度以降の実験推進において一層の効率向上が見込まれるものになったと期待された。 またシミュレーションは本接合法に特徴的な熱発生機構、分布が可視化されており、順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は前半で、新たに設計した装置が実際に推進する実験の仕様を満たしているか確認を行う。特に透過型電子顕微鏡で観察をしながら、実際に試料位置の制御の精度がどの程度か検証し改良を行う。また本ホルダーに組み込んだ振動子による試料の超音波振動の振幅、周波数が実際にどの程度なのか確認すると共に、試料と振動子の距離を微調整することでその場観察が可能な実験条件を探る。年度の後半では、実際に一枚のアルミニウム板に対して応力、超音波を印加する実験を行いその組織変化を観察する。この際に試料の形状やビデオ撮影法など、ホルダー以外の観察上の実験手法の検討・確立を行う。 また粒子法によるシミュレーションでは、引き続きアルミニウム板の超音波接合時の表面粗さ、振幅、加圧量などを変化させた際の熱発生の分布について計算を行う。特にその場観察実験に対して比較・補完が可能な初期パラメーターを採用することで、実際の超音波接合過程に対する統合的な知見を得ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額はホルダーに関するものである。2018年度、実験において検討すべき課題について細かく分析し、ホルダーの設計について議論・検討をした結果、従来想定したものに対して新たな機構を組み込んだ方が、実験効率が大幅に上がることが見込まれた。この機構の変更に伴う新たな設計、ホルダー各部の再作成に時間を要したため次年度使用額が生じた。本ホルダーは2019年度初頭に納品、使用予定である。
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