本研究では透過型電子顕微鏡内に超音波接合装置を組み込むことで、接合過程における微細組織変化を、直接その場観察により明らかにしようと試みた。装置の開発においては、透過型電子顕微鏡観察可能な薄片化した2枚の試料を、安定に高精度で接触させることが出来る試料ホルダーを製作した。この試料ホルダーは固定ステージと3軸方向に移動可能な可動ステージからなる機構を有している。可動機構はピエゾ素子による3軸微動とピエゾ素子とステッピングモーターによる3軸粗動を組み合わせた。さらにこの可動軸に超音波振動子を組み込んだ。これにより可動ステージに固定した試料が超音波振動し、それを固定ステージにセットされた試料に接触させることにより、超音波接合が可能になる機構を開発することが出来た。実際にホルダーに試料を取り付け観察しながら超音波発振させたところ、試料は所定の周波数で振動し、さらに振動エネルギーを増加させると振幅が増加することが確認された。 この開発試料ホルダーに2枚のAlの薄片試料を取り付け超音波接合する実験を行ったところ、接合中に多数のナノ結晶が接合界面近傍に生成した。これらのナノ結晶は薄片試料間を動き回り、大きく成長したり、試料間に集積することで微細粒領域を形成した。超音波接合後に接合界面に微細粒を有する試料に引張試験を行ったところある程度の強度を有していることが確認され、微細粒領域が接合界面形成に一定の寄与をしていることが示唆された。 接合過程のコンピューターシミュレーションでは、原子レベルでありながら長時間のシミュレーションが可能な、フェーズフィールドクリスタル法を接合に応用した。これにより接合される2つの結晶の相対方位角が変化すると界面構造、空孔数、系のエネルギー値が大きく異なることが分かった。
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