固体高分子型燃料電池(PEFC)に使われるPt電極触媒の代替として、遷移金属酸窒化物触媒の開発が望まれている。実用的なMEA(電極触媒層と固体電解質材料の膜を複合化した発電ユニット:Membrane Electrode Assembly)での利用のため、金属ジルコニウム製中空円筒型ターゲットを備えた直流マグネトロンスパッタリング装置を用いて、円筒ターゲット直下のプラズマ空間において、炭素微粒子を振動させながら加熱するユニットを開発し、炭素微粒子表面上に酸窒化物を直接製膜した。炭素微粒子の振動・加熱ユニットは、表面に絶縁膜を形成した金属製ボートと通電加熱するための電極全体を電磁石で振動させる構造とした。炭素粒子サイズが小さいときは凝集した粒子を分散させるまでには至らなかったものの、比較的大きいサイズの炭素粒子を用いることで個々の粒子の表面に製膜することに成功した。振動・加熱ユニットの振動を大きくしても供給時に凝集している粒子を単分散させることは難しく、また製膜速度を大きくすることでスパッタ物質による粒子同士の接着を招き、膜厚を大きくすることが困難であるといった問題点が見いだされた。上記のドライプロセスによる方法で炭素微粒子上に直接スパッタ製膜した酸窒化ジルコニウムについて、電気化学測定による酸素還元開始電位の測定を行い、基板上に製膜したZrON薄膜と同様の触媒性能を発揮することを確認した。炭素微粒子上のZrON系堆積物のSEM観察から、炭素微粒子径が大きい際には個々の粒子表面に製膜された様子が確認できた。基板上にZr7O8N4が形成される条件で作製しているものの、堆積時の炭素微粒子表面の温度計測が困難であること、導入できる微粒子量が非常に少ないこと、ZrON系のXRD回折図形が非常に類似していることから、堆積物の組成の確定は非常に難しい。
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