研究実績の概要 |
今年度は、Mg-Al二元系合金のAl濃度を1, 2, 3, 4, 5, 6, 9wt%で系統的に調整した試料を鋳造で作製し、まま材と、その溶体化熱処理材についてそれらの腐食物性の測定および組織観察を行った。溶体化熱処理はAl4wt%程度まで可能であったが、それより高濃度ではβ相が析出した。 Mg-Al二元系合金では、Al-12wt%程度の化学組成のAl-rich α相が優先腐食する傾向がみられるため、Al濃度に対して単調に腐食物性が変化することを予測していたが、腐食物性については、予測に反し腐食電位や腐食電流密度のAl濃度依存性は小さくAl濃度に対して単調な相関を示さなかった。これは、Al濃度に対して析出するβ相の形態が変化するためであることや、α相の不動態皮膜の化学組成などに影響を与えているためなどが予測される。また、重要な知見として、従来考えられていたよりも低濃度のAl添加量でβ相の析出とその周囲のAl-rich α相の形成が確認された。 Al-rich α相構造の第一原理計算によるシミュレーションは、Mg-Alの二元系で144原子のスーパーセルを用いてAl原子固溶した場合の計算をしており、二元系の場合Alが特定のサイトに存在することで大きな自由エネルギーの変化は見出されなかったことから、Al-rich α相はAlが単純に固溶した状態であると思われる。β相を析出にくい添加元素を探索するための計算では、いくつかの候補が見出され、現在それらを添加したMg-Al-X合金を作中である。
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