研究課題
今年度は、以前に作製したアルミ添加量を1~9wt%で変化させた試料の鋳造まま材および溶体化処理材について統計精度を向上するため電気化学試験を継続実施した。分極測定では、腐食電位、腐食電流密度、孔食電位等の腐食物性が高精度で定量的に得られ、Mg-Al二元系合金でみられる各相についての腐食挙動を議論するため、β相やAl-rich‐α相の形態を画像解析し、数値化したパラメータにより腐食特性との相関を調べた。その結果、不動態皮膜の形態と化学組成に依存する可能性が示唆されていたが、その現象を支持する結果が得られた。本研究では、高精度の分極試験を実施するため、pHを11程度に調整したNaCl水溶液環境での分極試験を実施しているが、その環境下では、安定な水酸化マグネシウム皮膜に合金元素が含まれた不動態皮膜が形成される。その皮膜中のAl濃度や厚さが皮膜下の金属の化学組成に依存するためこれらが腐食物性に影響していたと考えられる。この現象を調査するため、皮膜厚さの直接観察法を現在検討しており、その予備実験を今年度実施した。β相を不安定化させるX元素の候補の4種についてMg-9Al-1X合金を作製し、その耐食性を評価した他、1種類の濃度を0.5-2wt%で系統的に変えた試料を作製した。X元素4種の候補のうち、1種類は、β相を不安定化し、その体積率を抑制し、同時にAl-richα相の体積率も最も小さくする効果を示したことから有望な添加元素として期待できることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
Mg-Al-X合金について、β相の形成を抑制する添加元素を第一原理計算により候補となる元素を絞り、それらの添加によるβ相の抑制効果を調べた。一方、それらとAl-rich‐α相体積率との相関も調べ、腐食特性との比較を進めており、その結果を次年度に成果発表する予定である。
本年度の実験で見出されたβ相を不安定化し、その体積率を抑制し、かつAl-richα相の体積率も最も小さくする効果を示す有望な添加元素について添加濃度を変数にパラメータ実験を行い、濃度の最適化を図る予定である。
新型コロナウイルスにより一部の学会が延期されたことや実験の一部を翌年度に変更し消耗品の購入を繰り越したためであり、使用計画は、見送った学会の参加費や消耗品の購入費に充てる。
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Archives of Metallurgy and Materials
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