研究課題/領域番号 |
18K04776
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
芹澤 久 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (20294134)
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研究分担者 |
塚本 雅裕 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (90273713)
中里 直史 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (70714864)
岸本 弘立 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (30397533)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | レーザ加工 / 異材接合 / 金属微粉体 / セラミックス材料 / 耐熱金属材料 |
研究実績の概要 |
本研究では、無機であるセラミックス複合材料と耐熱金属材料との間に、無機材料との親和性に優れた金属材料を、反応性が高い微粉体として封入し、レーザを用いた局所加熱により、無機と金属とを直接接合する手法の開発を目的としている。 昨年度に実施した、炭化ケイ素繊維強化型炭化ケイ素複合材料(SiC/SiC)の平板と、ジルカロイ平板との接合実験結果より、平板間に封入する微粉体を、チタン微粉体だけでなく、チタン-ジルコニウム-銅系のロウ材を加えたほうが、両板間の反応性が向上することが分かった。令和元年度においては、研究分担者との予備的研究の成果として、チタン-銅系のロウ材、ならびに白金の蒸着層も、両平板の接合に効果があると考えられる結果を得た。そして、四種類の金属をSiC/SiC板とジルカロイ平板の間に封入し、レーザをジルカロイ平板の外表面に照射して、接合性の評価を行った。その結果、いずれも良好な接合性を示すことが分かった。さらに、チタン微粉体を用いた場合には、接合層部が二相となっていたが、ロウ材を加えた場合には、三相からなる混合層になり、良好な接合体を形成することが分かった。 SiC/SiC円管とジルカロイ円管との接合性については、昨年度、チタン微粉体を封入するためのSiC/SiC円管外表面に施した溝の幅が狭いほうが、レーザ照射中のチタン微粉体の飛散を抑制可能であることが分かった。令和元年度においては、狭い幅の溝形状を改良し、鍵型状の溝形状として、チタン微粉体の抑制効果、ならびにレーザ照射後のチタン微粉体とジルカロイ円管との固溶体の形成への影響を調べた。その結果、円管の円周全体に均一ではないが、大部分の領域で固溶体の形成に成功し、SiC/SiC円管とジルカロイ円管との接合体について、機械的に良好な接合だけでなく、これまでは困難であった気密性についても、格段に向上させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、ジルコニウム板にチタン微粉体を散布し、レーザ局所加熱によるジルコニウムとチタンとの溶融反応実験を実施する予定であったが、ジルコニウム板の発火性が強いことや、散布されたチタン微粉体がレーザ照射によって飛散してしまう危険性が高いことから、ジルコニウム板に代わってジルカロイ板を、また、ジルカロイ板とSiC/SiC板との間にチタン微粉体を封入することで、発火の危険、ならびにチタン微粉体の飛散を抑制した実験を実施した。これにより、ジルカロイ板とチタン微粉体との反応性に関する基礎的知見を得ることに成功した。 また、平成31年度(令和元年度)に予定していたSiC/SiCとジルコニウム-チタン固溶体との親和性評価試験に際しては、ジルコニウムとチタンとの固溶体の生成が必要であるが、ジルコニウムの発火性が高いという問題があるため、平板を用いたジルカロイ板とチタン微粉体との反応試験において、チタン微粉体に加えてチタン系のロウ材として、チタン-ジルコニウム-銅系のロウ材を封入した試験を行い、同じレーザ照射条件に対して、ロウ材を加えた場合のほうが、反応性が高くなる結果を得ている。つまり、当初計画のSiC/SiCとジルコニウム-チタン固溶体との親和性に代わって、チタン微粉体とチタン系のロウ材との比率を変化させることで、SiC/SiC円管とジルカロイ円管との接合体を作製させるのに効果的な条件を見出すことに成功している。 さらに、SiC/SiC円管とジルカロイ円管との直接接合試験についても、当初計画よりも早く、チタン微粉体を封入するためにSiC/SiC円管の外表面に作製する溝幅の影響を明らかにすることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度および令和元年度の二年間を通じて、ジルカロイ板とSiC/SiC板との間に、チタン微粉体、チタン微粉体とチタン-ジルコニウム-銅系のロウ材との混合物、チタン-銅系のロウ材、ならびに白金の蒸着層を封入した状態で、レーザ局所加熱を実施し、封入した材料に関係なく、良好な接合体が作製可能であることを見出すことに成功してきた。特に、チタン微粉体とチタン-ジルコニウム-銅系のロウ材との混合物を用いた場合には、SiC/SiC板側にロウ材を封入した上で、その後に、チタン微粉体を封入することで、ロウ材とSiC/SiCとの間に空壁や欠陥のない、良好な接合界面層の生成に成功した。つまり、本研究の最終目標である、機械的特性だけでなく気密性にも優れた、SiC/SiC円管とジルカロイ円管との直接接合体の作製には、チタン微粉体とチタン-ジルコニウム-銅系のロウ材との混合物を、接合助剤として封入することが最も有効であると考えられる。 また、接合助剤を封入するためにSiC/SiC円管の外表面に加工する溝形状は、溝幅が狭く、しかも鍵型の形状とすることにより、レーザ照射中の熱衝撃にる、接合助剤の飛散が抑制可能であると考えられる結果を、平板を用いた基礎実験から得ている。 したがって、溝幅が狭く、鍵形状の溝加工を、SiC/SiC円管の外表面に行い、溝部に最初に、チタン-ジルコニウム-銅系のロウ材を封入した後、同じ溝部を充填する目的で、チタン微粉体を封入する。その後、SiC/SiC円管の外表面に、ジルカロイ円管を重ね封入させて、SiC/SiC円管の溝部に沿うように、ジルカロイ円管外表面を、レーザにより局所加熱することで、最終目標である、機械的特性および気密性に優れたSiC/SiC円管とジルカロイ円管との直接接合体の作製に成功すると考えられる。
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