熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する熱電変換材料の高性能化には材料のゼーベック係数Sおよび電気伝導率σを大きく、熱伝導率κを小さくする必要がある。その設計指針としてPBET(Phonon Blocking Electron Transmitting)的特性を示す材料の実現が提案されている。これは熱を伝搬するフォノンを遮断し、電気を伝搬する電子(キャリア)を通過させるような構造を持った材料が優れた熱電変換材料となり得るというものである。 2018年度(平成30年度)の研究において、キャリアを有するZn0.98Al0.02O粉末と、キャリアを有せず熱伝導率が低いZn0.9Mg0.1O粉末粒子から成る複合焼結体を作製してその熱電特性を評価した結果、熱伝導率はZn0.98Mg0.02Oの添加量の増加に伴い単調に減少したものの、ゼーベック係数および電気伝導率はある添加濃度において最小値および最大値をとるなどキャリアの変調ドープによる効果のみからは説明できない結果が得られ、両粉末粒子間における固溶について検討する必要があることが判明していた。そこで2020年度は27Al NMRを用いて、Al、Mg添加ZnOにおけるAlの固溶域の検討を行った。 (Zn0.9Mg0.1)1-xAlxO (x=0.01~0.03)の試料について、27Al NMR測定を行ったところ、すべての試料について88MHzおよび88.7MHz付近に共鳴吸収ピークが観察された。ピーク強度の検討から前者がZnOのZnサイトに置換したAl、後者が不純物として析出したZnAl2O4のAlの共鳴吸収ピークであることが推察された。この結果よりAl、Mg添加ZnOにおけるAlの固溶域は0.01未満であることが明らかとなった。
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