研究課題/領域番号 |
18K04778
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
日野 隆太郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (10283160)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高張力鋼板 / 伸びフランジ変形 / 成形限界ひずみ / 面内引張曲げ試験 / 穴広げ試験 / ひずみ勾配 |
研究実績の概要 |
昨年まで使用していた高張力鋼板590Y(二相鋼)と590R(析出強化鋼),および二相鋼板980Y(板厚はいずれも1.0mm)に加え,新たに780MPa級の二相鋼板780Y(板厚1.0mm)を新たな供試材として加え,基本的材料特性を取得する実験,面内引張曲げ試験を実施した.780Y材の面内引張曲げ試験については,ワイヤカット加工,レーザ切断加工により試験片を作製して種々の条件下で面内引張曲げ試験を実施し,デジタル画像相関法(DIC)を用いて曲げ部ひずみ分布と曲げ外側の板縁における伸びフランジ成形限界ひずみを調査した.その結果,曲げ外側板縁の伸びフランジ成形限界ひずみは,材料の引張強さにほぼ反比例して低下することが明瞭に示された. 面内引張曲げにおいて,試験片幅方向のひずみ勾配(試験片長手方向ひずみ=最大主ひずみの試験片幅方向勾配)が大きくなるほど,曲げ外側板縁の伸びフランジ成形限界ひずみが大きくなる傾向があることがこれまでの研究でわかっており,とくに590Y材と590R材ではその傾向が明瞭に観察されていた.一方,強度レベルの高い980Y材や780Y材ではその傾向がさほど明瞭ではなくデータのばらつきが目立った.また,590Y材と590R材では板縁から破断する「縁割れ」と,板縁から離れた位置を起点として破断が生じる「内割れ」の2種の破断形態が見られたが,980Y材や780Y材では「縁割れ」のみが観察された.これらのことから,強度レベルの上昇に伴って破断形態に何らかの違いが生じている可能性が示唆された. また,面内引張曲げ試験結果と穴広げ試験結果を同一のひずみ勾配条件下で比較するため,面内引張曲げ試験法の改良についても検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
強度レベルの異なる新たな供試材780Yの実験には着手できたが,新型コロナウイルス禍による休校などの影響により年度前半は研究協力者(大学院生・学部学生)による実験の実施が困難な状況があり,基本的材料特性の取得実験,従来型の穴広げ試験,面内引張曲げ試験のいずれについても未実施の条件がかなり残る結果となった.昨年度は順調に進展した有限要素解析についても,強度レベルの高い980Y材や780Y材の材料特性取得実験に遅れがあることから,これら高強度材の解析が実施できていない.
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今後の研究の推進方策 |
基本的材料特性の取得実験,従来型の穴広げ試験,面内引張曲げ試験を引き続き実施し,現在未実施となっている条件における実験を順次終了させる.強度レベルの異なる材料4種(590R,590Y,780Y,980Y)について異なる加工法3種(ワイヤカット加工,レーザ切断加工,打抜き加工)の試験片を用い,広範な条件下で系統的な伸びフランジ成形限界データをそろえる. 面内引張曲げ試験の有限要素解析による伸びフランジ成形限界予測も引き続き実施する.板縁破断部周辺の応力・ひずみ分布とその履歴が板縁の伸びフランジ成形限界ひずみに及ぼす影響を明らかにし,伸びフランジ成形限界の支配因子を検討するとともに,伸びフランジ成形性の評価法・予測法を検討する.評価法についてはなるべく簡便な実験で評価できること,予測法については市販の有限要素解析ソフトウェアと連携して実成形問題に適用できることを念頭におく.
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