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2018 年度 実施状況報告書

焼結金属における3D気孔配置のトポロジー解析ー疲労破壊挙動の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K04779
研究機関九州大学

研究代表者

尾崎 由紀子  九州大学, 工学研究院, 教授 (20637946)

研究分担者 品川 一成  九州大学, 工学研究院, 教授 (30215983)
平山 恭介  九州大学, 工学研究院, 助教 (70717743)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード疲労破壊 / 金属疲労機構 / 気孔配置 / パーシステントホモロジー / X線CT測定
研究実績の概要

本研究は、金属焼結体の疲労亀裂の発生と伝播過程をX線CTによって4次元(4D)観測し、亀裂の発生・伝播に関わる気孔配置の変化をパーシステントホモロジー(PH)解析し、金属焼結材料の疲労破壊機構の解明を目的とする。H30年度は実験計画に従い、下記の基本的な実験手法を確立した。
1)小型焼結体試作プロセスの選定:X線透過率が高い実用組成としてTi-6Al-4V粉末を対象に、X線CT観測用に厚さ1mmの疲労試験用小型焼結体製造プロセスを検討した。その結果、射出成型(MIM)法によって作成した焼結体を旋盤加工することによって疲労試験用小型焼結体の製造が可能であることを確認した。
2)SPring-8におけるTi系焼結体のX線CTスキャン条件の検討:上記の手法で試作したTi合金焼結体についてX線CT観測条件を検討し、X線エネルギー 52KeV, 露光500msの条件で良好な透過像を得た。
3)気孔中心座標の数値化技法の確立;3D画像から求めた気孔の中心座標位置を、homcloud(東北大・平岡研)によってPH解析し、10万点あまりの気孔が形成するネットワーク構造を2次元のパーシステント対(b.d) に変換、これを2次元座標に散布図としてプロットできることを確認した。さらに、散布図中の点密度の高いパーシステント対(b.d) に対応する気孔群の重心座標を抽出し、ユークリッド空間上にプロットし、線で結ぶことによって、焼結体構造を特徴付ける気孔ネットワーク構造を特定することに成功した。本結果の一部はEuroPM2018 Keynote Paper Awardを受賞。
4)小型焼結体を用いた疲労試験方法の検討(前倒検討):オフラインで疲労限破断直前の状態まで繰返し応力を付与した小型焼結試験片のX線CT観察を行い、疲労亀裂の3D観察で想定される課題を抽出し、今後の実験計画を修正した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

H30年度の研究計画書では、「モデル焼結体のX線CT測定による気孔配置の数値化技法の確立」のため、1)X線透過率の高いモデル焼結体の試作、2)気孔構造の3D観測および数値化技法の確立について検討を実施予定であった。概要で述べた通り、いずれも計画通りに遂行できた(概要1-3)。さらに、疲労試験方法についても予備調査を前倒しで実施した。
一方、当初計画では、小型焼結体を粉末の均一振動充填・熱間静水圧プレス(HIP)による製法を想定したが、粉体の均一充填状態を保持したままのHIPが困難であることが判明し、上記のMIM法に変更した。
また、当初、オフライン疲労試験後、除荷し、無負荷状態でCT観測を行うことを想定したが、疲労亀裂の幅がX線CTの精度同等以下であることが分かった。このことから、オフライン疲労試験後も、亀裂幅を広げた状態でCT観測を行う必要を確認し、インラインでの試料への引張応力付与装置設置の検討を次年度課題に追加した。
以上より、現時点では当初の計画以上に進展したものと評価した。

今後の研究の推進方策

*本研究課題の今後の推進方策および計画変更点
1)焼結体への繰返し応力付与方法の検討および疲労亀裂のCT観察のための予備データ取得(当初計画に追加)
オフラインで試作した小型焼結体について疲労試験を行い、SN線図を作成し、CT観測を行う繰返し数Nを決定する。
さらに、未破断状態の試験片に引張応力を付与したままX線CT測定を行うため、インラインに設置可能な引張治具を製作する。
2)繰返し応力を付与した焼結体のX線CT観測および疲労亀裂のCT観察(当初計画)
オフラインで所定回数Nの繰返し応力を付与した焼結体を、引張応力を付与した状態でCT観測し、繰返し数Nの増大に伴う疲労亀裂および気孔発生状態を上記のH30年度確立した手法でPH解析し、疲労亀裂伝播に寄与する気孔配置(塑性ひずみ領域の進展)を特定する。

次年度使用額が生じた理由

*当該助成金が生じた状況: 当該年度検討項目のうち、原料粉末は材料メーカーよりのサンプルとして無償供与を受けたこと、さらに、粉末の成形方法についても検討の結果、HIP法からMIM法に変更したことによって、所属内で保有する射出成形機による成形が可能となり、外注費用が発生せず、その他費用が大幅に削減できた。

*翌年分と合算した助成金の使用計画:粉末成形費用は節約できたが、前年度の呼び検討で、X線CT測定時にインラインで試料に引張応力を付与する引張治具の設置が必要であることが分かり、当該助成金は引張治具の製作(120万円相当)に当てることとした。さらに、前年度購入を見送った3Dデータ解析用のワークステーションは次年度購入予定。2019年度分は、計画通りに執行予定。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Four-dimensional observation of ductile fracture in sintered iron using synchrotron X-ray laminography2019

    • 著者名/発表者名
      Y. Ozaki, Y. Mugita, M. Aramaki, O. Furukimi, S. Oue, F. Jiang, T. Tsuji, A. Takeuchi, M. Uesugi & K. Ashizuka
    • 雑誌名

      Powdwe Metallurgy

      巻: 62 ページ: 146-154

    • DOI

      https://doi.org/10.1080/00325899.2019.1585032

  • [学会発表] Four-dimensional Observation of Ductile Fracture in Sintered Iron using Synchrotron X-ray Laminography2019

    • 著者名/発表者名
      Y. Ozaki, Y. Mugita, M. Aramaki, S. Ooue, K. Ashizuka, A. Takeuchi, M. Uesugi and O. Furukimi
    • 学会等名
      Euro PM2018 Congress, Birbao, Spain
    • 国際学会
  • [学会発表] 閉気孔からなる高密度純鉄焼結体の延性破壊過程における 閉気孔の形態および気孔間距離の影響―閉気孔の切欠き効果の検証2018

    • 著者名/発表者名
      中村 公二, 鴨川 知誉,麦田 康敬 , 荒牧 正俊,芦塚 康佑,尾﨑 由紀子
    • 学会等名
      粉体粉末冶金協会平成30年度秋季講演大会

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公開日: 2019-12-27  

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