研究課題/領域番号 |
18K04781
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
真鍋 健一 首都大学東京, システムデザイン研究科, 客員教授 (10145667)
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研究分担者 |
高橋 智 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (80260785)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイクロ金属加工 / 長尺マイクロチューブ / 高液圧成形 / マイクロトライボ特性 / 材料流動特性 / 成形メカニズム / 寸法効果 / 枝管成形 |
研究実績の概要 |
金属マイクロ管の低いハイドロフォーム性に着目し、先行研究で得られている、それとは逆に枝管成形での高いハイドロフォーム性の解明と、それを支配する高圧下におけるマイクロ管材料と摩擦の寸法効果の解明を目的としている。本年度は摩擦の影響を強く受ける長さ/直径比(L/D)の大きい長尺マイクロ管に着目し、T成形および十字成形における材料流動特性、マイクロトライボロジ挙動に及ぼす管長さと摩擦の影響について調査した。成果は以下のとおりである。 (1)外径500μmのマイクロT成形において、全長L=3.2mm、10mm、20mm(L/D=6.4、20、40)の3種類の管を用いて、成形中の張出し挙動を調べた結果、Lが3.2mmから10 mm、20mmに増加するに従い、張出し高さと軸押込み変位の勾配a(増加率)は大きく減少するようになり、L=20mmの長尺マイクロ管ではほとんど張り出さず、そのaはf(1/L)の関数で表される。同様に、摩擦係数のaへの影響は、g(1/μ)の関数で表されることを示した。すなわち、軸押込みに対する張出し高さの勾配aに対する効果は、管長さLとμは定性的に等価であり、長尺マイクロ管ほど低いハイドロフォーム性を示すことを確認した。 (2)管の枝管成形における材料流動への影響因子について理論モデルから、軸押しによる管の変形領域AFAZ(管材の流動域)の長さLfdは管の初期長さに依存せず、摩擦係数と負荷内圧による金型内面に作用する面圧、さらに管材の強度(降伏強度)および外径と肉厚に依存することを示した。 (3)十字成形とT成形によって材料流動に及ぼす成形形状の影響に関して巨視的均質有限要素解析で検討し、上記理論モデルとの比較によって、上記影響因子の効果についてより詳細に検討した。結晶粒径を考慮した不均質モデリングを完了し、次年度に向けて材料流動に対する寸法効果の調査準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マイクロ枝管成形(T成形と十字成形)に対する材料流動やトライボ特性に及ぼす管の長さと摩擦等の影響因子の解明調査は着実に進んでいる。理論及び巨視的均質モデルによる有限要素解析から現象解明も大きく進み、多くの研究結果が順調に得られている。短いマイクロ管の枝管成形実験における成形挙動に及ぼす摩擦の影響の現象分析も深めることができている。また、材料挙動、マイクロトライボ特性への寸法効果を明らかにするため、無酸素銅マイクロ管の熱処理温度と保持時間による結晶粒径の成長を確認し、それを基に金属組織の結晶粒径を考慮した不均質モデルの作成を終え、寸法効果について検討できる準備は計画通り整えている。しかし、その実験的検証が遅れている。上記の解析成果から、長尺マイクロ管に適用できる実験を行うためには、軸押しパンチが当初計画よりさらに長くすることが必要とわかり、その場合には枝管成形実験用の軸押しパンチが軸押し時に容易に折損することになった。さらにマイクロ管に高内圧を供給するために設ける軸押しパンチ外周の微細な溝加工も、パンチの細長化により制作困難を極めた。これら実験装置製作上の課題解決に時間を要していたため進捗に遅れをきたした。この点で研究全体の進捗がやや遅れをとっている。
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今後の研究の推進方策 |
1)2019年度に明らかにした、マイクロトライボ挙動の現象解明に重要となる軸押しによる管の変形領域AFAZ(管材の流動域)の長さを検証するため新たな基礎実験を行い、理論の実験的裏付けを試みる。それを基に、マイクロ十字成形およびT成形実験に適用できる最小軸押しパンチ長さの検討を行う。あわせてマイクロトライボ特性に及ぼす金型表面粗さ、金型材質、金型と管の隙間(ギャップ)、他の枝管成形の成形条件およびマイクロ管の結晶粒径の影響を調査する。これらにより本研究レベルを学術的により深める。 2)上記の検討結果を踏まえ、早期に実験検証のための十字成形またはT成形用の実験金型と装置改良などに取組む。管長さと摩擦の効果を明らかにできるマイクロ管の最小長さで、金型および装置の改良と実験条件の見直しを行う。並行して巨視的均質モデルでの有限要素解析で実証の可能性について事前検討を行い、確実に管長さと摩擦の効果が検証できる実験を行う。 3)2019年度に作成した結晶粒径を考慮した不均質モデルを用いて有限要素解析を行い、マイクロトライボ特性の寸法効果について、微視的観点から検討する。上記1)の実験結果との比較検討も含め、総合的な考察を通して3年間の研究成果を総括する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1)2019年度の研究の中で、長尺マイクロ管の材料流動やトライボ特性を解明する上で、軸押しによる管の変形領域AFAZ(管材の流動域)の理論長さを実験的に検証し、その詳細な現象解明が本研究に不可欠であることが判明した。加えて上記7で述べたように、長尺マイクロ管の枝管成形実験装置の改良製作が困難となり、より短い管を用いる装置改良の必要が生じたためである。以上から、マイクロ管の金型を用いた据え込み試験用の実験装置の費用、および早期にその結果を踏まえたやや遅れをとっているT成形または十字成形用実験装置の改良費などに予算を充当させる。 2)新型コロナウイルスの感染拡大により、急遽、研究成果を発表する学会参加を取りやめた。また感染拡大防止により本研究分野の講演会が中止に追い込まれ、同様に国際会議は次年度に延期された。そのため、発表が繰り延べになっている研究成果の発表のため、国内および国外の学会(国際会議)への参加旅費に充てる。
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