研究課題/領域番号 |
18K04784
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
春名 匠 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (70243186)
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研究分担者 |
廣畑 洋平 関西大学, 化学生命工学部, 助教 (00761264)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水素検出用走査型レーザー電解顕微鏡 / 水素脆化 / 局在水素 / 水素検出 / 高強度鋼 |
研究実績の概要 |
高強度化された鉄鋼材料は,供用中に起こる腐食に伴う微量の水素の侵入によって,局部的に破壊する水素脆化を起こす懸念があるが,水素脆化に関係する水素の材料内での存在位置については必ずしも明確にはなっていない.そこで本研究では,湿潤状態に設置された鉄鋼材料にマイクロメートルのスケールで局在化し,移動する水素の二次元分布をin-situに検出する半導体ブルーレーザー型局部水素検出用走査型レーザー電解顕微鏡(H-SLEEM)を開発する.さらに,高強度鉄鋼材料中の水素移動経路とその移動速度,ならびに局所的な水素脆化発生臨界水素濃度を定量的に測定することにより,湿潤環境中で高強度鉄鋼材料に発生する水素脆化機構の解明に取り組む. 平成30年度は,半導体型ブルーレーザー型局部水素検出用走査型レーザー電解顕微鏡(H-SLEEM)ならびに小型電気化学的水素透過試験用反応槽を作製した.また,このシステムが,水素検出面まで透過した水素の酸化電流とその水素検出面へのブルーレーザー光の照射による応答電流との間に正の相関を示すことを確認し,局所的な水素移動位置を検出することが可能であることを実証した. 令和1年度は,当該レーザー照射による応答電流の検出感度を向上させることに取り組み,通常水素検出面に被覆するNiメッキを行わない場合に応答電流の検出感度が向上することを見出した.また,この顕微鏡の反応槽設置台にX-Yステージを導入することによって,試料に照射するレーザー光の二次元走査を可能にした.さらに,このレーザー光走査機能を利用して,このレーザー光の水素検出に対する有効照射直径を約0.03 mmと推定した.最後に,この顕微鏡が粗大結晶粒を有する純鉄の粒界近傍に局在水素を検出した可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は,当該顕微鏡と小型反応槽の作製を行い,レーザー光の集束化,小型反応槽での水素透過現象の確認,水素検出面での水素酸化電流とレーザー照射応答電流との間の正の相関性の確認など,大きな故障や重大な事故を起こすことなく,ほぼ当初の計画通りに当該顕微鏡の開発を進めた. 令和1年度は,当該顕微鏡における水素検出感度を向上させること,局在水素位置検出の空間分解能を把握することなどの当該顕微鏡が局在水素位置を検出できる条件の把握に主な時間を使った.また,この成果に基づき,実材料である多結晶鉄での局在水素位置の検出に挑戦した.このように今年度も,大きな故障や重大な事故を起こすことなく,ほぼ当初の計画通りに当該研究を進めた.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では,当該顕微鏡を開発し,基本性能を把握した. 令和1年度では,当該顕微鏡による局在水素位置の検出に関する条件の詳細を把握し,水素が移動している不均一材料での局在水素位置の検出に挑戦した. 令和2年度では,水素が移動している不均一材料での局在水素位置の検出実験例を増やして,局在水素位置の検出成果に対する信頼性の向上を図り,水素脆化機構の解明を進める.,
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