研究課題/領域番号 |
18K04790
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
大越 昌幸 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 教授 (70283497)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スマート窓 / ポリカーボネート / シリコーン / フッ素レーザー / エキシマランプ / 耐熱性 / 超撥水性 / 微小電極 |
研究実績の概要 |
本研究では、シリコーン系ハードコートが施されたポリカーボネート(PC)表面に、波長157 nmのフッ素(F2)レーザーを照射することにより、耐摩耗性のみならず、耐熱性・耐紫外線性を有するPC窓材を開発する。また、F2レーザーを再度局所的に照射して、開発したPC窓材表面に耐候性・耐スクラッチ性を有する、微小電極としてのAl薄膜を位置選択的に形成する技術を確立して、微小スマートスピーカーを作り込んだ「会話する」スマート窓材を開発することを目的としている。 そこで平成30年度は、厚さ2 mmのPC上に、アクリル系プライマー(膜厚4ミクロン)を介して、シリコーン樹脂(膜厚10ミクロン)を形成し、その表面にF2レーザーをフルエンス10 mJ/cm2、パルス繰り返し周波数10 Hz、照射時間30 sで照射した。その結果、PC上のシリコーン樹脂表面は光化学的にシリカガラス(SiO2)化した。その試料を、120℃の電気炉内で3 hの耐熱試験、およびUVランプを用いた700 hの超促進耐候性試験を行った。その結果、耐熱試験において、SiO2改質層にクラックが発生した。そこで、F2レーザーを照射して試料全面をSiO2化した後、周期的な凹凸構造を形成することにより、クラックの発生が抑制できる手法を見出した。以上の結果より、耐熱性・耐紫外線性を有するPC窓材を得ることができた。 また、SiO2改質層が形成されたPC窓材に、Al薄膜(膜厚10~100 nm)を局所的に形成し、F2レーザーを照射した。そして、F2レーザーにより誘起される強い酸化反応により、Al薄膜表面に緻密で極薄いAl2O3酸化改質層を形成して、耐候性と耐スクラッチ性を発現させることに成功した。 さらに、PC上にコーティングされるシリコーン材料に注視し、その表面に超撥水性を発現させる手法を見出し、多様なスマート化の基礎的成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度は、F2レーザーを用いて作製したPC窓材の耐熱性、耐紫外線性を予定通り実証でき、またその際問題となったSiO2改質層のクラック発生も、SiO2改質層に予め周期的な凹凸構造を形成することによって抑制できることを見出した。また、SiO2改質層にAl薄膜(膜厚10~100 nm)を局所的に形成し、F2レーザーを照射するにより、Al薄膜表面に緻密で極薄いAl2O3酸化改質層を形成して、耐候性と耐スクラッチ性を発現させることも予定通り実証できた。その上で、シリコーン表面に超撥水性を発現させる手法も見出している。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、まずSiO2改質層が形成されたPC窓材に、Al薄膜(膜厚10~100 nm)を局所的に形成し、F2レーザーを照射する。そして、SiO2改質層とAl薄膜との界面で、光化学的にAl-O-Si結合を形成し、PC窓材とAl薄膜の強密着性を実現し、スマート化の基礎的成果を得る。 また、シリコーンハードコートが施されたPC表面に、波長172 nmのXeエキシマランプを照射することにより、F2レーザーの場合と同程度の硬度を有するSiO2改質層を形成するための照射条件を見出す。その結果を基に、エキシマランプの出力ならびに必要なランプ数を見積もり、フォトンコストを抑えながら、1 min/m2の処理速度を達成する。また、平成30年度に見出したクラック抑制法を適用し、エキシマランプにより作製したPC窓材の耐熱性試験、ならびにUVランプを用いた超促進耐候性試験を行う。 さらに、シリコーン表面に超撥水性を得るための基礎的実験を継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、現有設備の範囲内で研究計画以上の成果を得ることができた。実験結果を得ることを優先したため、令和元年度にその研究成果を積極的に発表する。また、PC窓材のスマート化において、現有設備の金属蒸着装置では継続的に実験が進められないため、令和元年度に小型の金属薄膜形成装置を導入する。
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