本研究では、シリコーン系ハードコートが施されたポリカーボネート(PC)表面に、波長157 nmのフッ素(F2)レーザーを照射することにより、耐摩耗性のみならず、耐熱性・耐紫外線性を有するPC窓材を開発する。また、F2レーザーを再度局所的に照射して、開発したPC窓材表面に耐候性・耐スクラッチ性を有する、微小電極としてのAl薄膜を位置選択的に形成する技術を確立して、微小スマートスピーカーを作り込んだ「会話する」スマート窓材を開発することを目的としている。 令和2年度は、SiO2改質層が形成されたPC窓材表面に、位置選択的にAl薄膜(膜厚10~100 nm)を形成し、その後F2レーザーを照射して、Al薄膜とSiO2改質層とを光化学的に強密着することを行った。次に、圧電材料としてチタン酸バリウム(BaTiO3)を選択し、大気中でのパルスレーザー堆積法(μ-PLD法)により薄膜を形成した。さらにその上にAl薄膜を重ねて、Al/BaTiO3/Al積層構造を作製した。Al薄膜の高い導電性を保持するために、BaTiO3薄膜を平坦に堆積させることが必要であり、そのための実験条件を調べた。またAl薄膜の代わりに、Au薄膜を微小電極として機能させることも検討し、SiO2改質層が形成されたシリコーン上のAu薄膜の密着性についても調べた。 その他、スマート窓材開発のための要素技術として、波長193 nmのArFエキシマレーザーを用いたシリコーン表面への周期的微細隆起構造の形成を行い、微細隆起構造の形状制御と機能性付与に関する新たな実験的成果を得た。
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