研究課題/領域番号 |
18K04791
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
谷 淳一 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究室長 (20416324)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱電変換材料 / 放電プラズマ焼結 / スパッタリング / 輸送特性 / 微細組織制御 / 合成 / 薄膜 / ジントル相 |
研究実績の概要 |
近年、地球環境問題やエネルギー問題が深刻化しており、廃熱を電力に変換できる熱電発電の実用化に期待が集まっている。本研究では、層状構造を有するZintl相Mg-Sb-Bi系熱電半導体に着目し、高性能化のための精密合成プロセスや薄膜化などの材料加工技術を開発する。これまでのMg3Sb2の実験研究はバルク材料を対象としており、薄膜化の検討はほとんど実施されていない。本年度は、高周波マグネトロンスパッタ法により、Mgディスク上にSbチップを載せた2元素成分系の複合ターゲットを用いることで、多結晶Mg3Sb2半導体薄膜の作製に成功し、以下の成果が得られた。 ① Mg-Sb薄膜中のMg/Sb組成比はMgディスク上に載せるSbチップ数(x)を変えることで制御することができた。 ② Mg-Sb薄膜のX線回折図形の解析結果、立方晶Mg3Sb2(c-Mg3Sb2)、六方晶Mg3Sb2 (h-Mg3Sb2)、Mg、Sbの4つの結晶相が存在することが分かった。また、室温成膜のx=14の複合ターゲットを用いた際には、シャープな結晶相のピークは存在せず、アモルファス構造であった。Mg3Sb2の結晶相は成膜条件によって大きく異なっており、ターゲットのMg/Sb組成比と基板温度の両方が密接に関係していることを明らかにした。 ③ Mg-Sb薄膜の室温におけるホール効果測定の結果、c-Mg3Sb2はh-Mg3Sb2よりも電気抵抗率が高いことが明らかとなった。c-Mg3Sb2はバンドギャップ1.92 eVの直接遷移型の半導体であり、h-Mg3Sb2の文献値(0.4-0.8 eV)よりも大きなバンドギャップを有することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、Zintl相Mg-Sb-Bi系熱電半導体の高性能化のための精密合成プロセスや薄膜化などの材料加工技術の開発を目的としている。酸化物還元法とパルス通電加圧焼結法を組み合わせることで、短時間の1段階プロセスで高性能のY、La、ScドープMg3Sb2の合成に初めて成功した。また、本年度は、高周波マグネトロンスパッタ法によるMg3Sb2薄膜の成膜条件を詳細に検討し、同薄膜の作製に成功し、成膜条件と構成相、微細組織との相関を解明するなど、学術的にも一定の成果が得られたことから、当初の研究目標を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
Mg3Sb2薄膜の構成相や微細組織はスパッタ条件の影響を大きく受けるため、今後、同薄膜の輸送特性や熱電特性を詳細に解明するための追加実験を行い、学会発表や論文投稿を行うことで本研究の成果を広く公開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)熱電特性評価装置、スパッタリング装置が老朽化しており、装置性能維持のために次年度に消耗品を購入する必要が生じた。また、成果公開のために予定している論文投稿のための英文校正費や学会出張費、学会登録費が必要となった。 (使用計画)繰越金は、熱電特性評価装置、スパッタリング装置などの消耗品購入や英文校正費、学会出張費、学会登録費に充てる予定である。
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