研究課題/領域番号 |
18K04792
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
足立 振一郎 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (50359410)
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研究分担者 |
山口 拓人 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (20530041)
榮川 元雄 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (30359426)
萩野 秀樹 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 総括研究員 (90359422)
上田 順弘 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 研究員 (90359365)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 低温プラズマ窒化処理 / 低温プラズマ浸炭処理 / オーステナイト系ステンレス鋼 / レーザメタルデポジション / 耐摩耗 / 耐腐食 |
研究実績の概要 |
レーザメタルデポジションで作製したオーステナイト系ステンレス鋼は,ニッケル,クロムおよびモリブデンが添加された合金であるが,低温プラズマ窒化処理および浸炭処理により,耐摩耗性および耐腐食性に優れた拡張オーステナイト(S相)を形成するのに最適化された組成のオーステナイト系ステンレス鋼を開発することを目的として,昨年度は窒化処理におけるニッケル元素の効果について検討した.本年度は,浸炭処理におけるニッケル元素の効果,および窒化処理と浸炭処理におけるモリブデン元素の効果について検討した. ニッケル元素が低温プラズマ浸炭処理に及ぼす効果に関しては,11-27 wt.%の組成範囲のステンレス鋼において,拡張オーステナイト(S相)の生成が認められた.S相のビッカース硬さは,ニッケル量が増加するにつれて低下した.GDOESにより炭素の深さ方向分布を調べた結果,ニッケル量が増加することで,固溶炭素量の低下が認められた.これは,ニッケル量が増加するとステンレス鋼中のクロム元素量が相対的に減少するが,クロム元素は炭素と親和性が高いため,クロム元素が減少することで炭素の固溶量が低下したためと推察される. 一方,モリブデンを添加したステンレス鋼の合金層を低温プラズマ窒化処理および浸炭処理をした場合,S相の厚膜化と耐摩耗性の向上が認められた.特に,浸炭処理よりも窒化処理の場合に高い効果が得られることが判明した.耐腐食性に関しても,電気化学測定により塩水中で孔食の発生を抑制する効果が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オーステナイト系ステンレス鋼におけるニッケルおよびモリブデンが,低温プラズマ窒化処理および浸炭処理で形成される拡張オーステナイト(S相)に及ぼす効果について,予定通り解明することが出来た.ニッケルの添加がS相の特性を改善する効果は限定的であったが,モリブデンの添加に関しては,耐摩耗性に効果があるなど良好な結果が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
拡張オーステナイト(S相)を形成するのに最適化されたオーステナイト系ステンレス鋼の組成がある程度解明できたので,さらにセラミックスを添加した場合のS相について検討を実施する.また,セラミックスと複合化したオーステナイト系ステンレス鋼の造形物を作製し,低温プラズマ処理を実施するための課題を検討および解決して,S相の形成を達成する.
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次年度使用額が生じた理由 |
装置の使用頻度が当初の研究計画より少なくなり,それに伴い消耗品の購入費用が予定より減少したため差額が発生した.実施できなかった装置使用を次年度に行うことで,必要な消耗品の購入費用として使用する予定である.
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