研究実績の概要 |
環境保全の観点から重金属類を含有する水の浄化は重要であり、除去能力が高く、かつ簡便でコンパクトな処理法および装置が求められている。処理対象水中で粒状の鉄を混合する新しい技術による排水処理システムを多方面で実用化していくためには、工学的見地から処理の定量評価とそれに基づく最適化が必要である。 今年度は、バッチ式の小型装置を用いて、処理特性に及ぼす除去対象元素の影響を調査した。除去対象元素とそれらの初期濃度はAs 10、100 mg/L、Se 10、100 mg/L、B 20、100 mg/L、Zn 20、100 mg/L とした。溶液中の溶存 Fe 濃度、pH、ORP、DO、除去対象元素の溶存濃度の経時変化を明らかにした。 以上を含めて、研究期間全体を通して以下を明らかにした。研究手法の基礎の一つとなる、詳細なデータが取得可能な小型装置を設計・製作した。この装置を用いて、基本となる実験条件や手順といった実験方法を確立した。その上で、主に基本水溶液を対象として、操作因子の中で撹拌速度と酸素の供給速度の影響を調査した。さらに、処理時間が生成粒子に与える影響を調査した。 各実験条件において、処理特性として pH, ORP, DO や、溶存Fe濃度の経時変化を把握した。また、処理後に生成粒子を回収し、質量測定、XRD分析、磁化特性測定、鉄濃度測定を実施した。本処理法ではマグネタイトが安定に生成されることが確認された。さらに、粒子生成速度の近似式を提案し、粒子生成速度は、時間に依らず一定で、撹拌速度の2乗に比例する項と容器に供給した混合気体の酸素濃度に比例する項との和で近似できることを明らかにした。また、As, Se, B, Zn を除去対象元素とした処理を実施した。新しい排水処理法における各種操作因子が処理特性に及ぼす影響を明らかにした。
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