研究課題/領域番号 |
18K04805
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
増原 陽人 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (30375167)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ペロブスカイト / 量子ドット / ナノ結晶 / オストワルド熟成 / 再沈法 |
研究実績の概要 |
現在のところ、オストワルド熟成の完全な解明には至っていないが、申請書に記載した研究方法「①再沈法によるペロブスカイトナノ結晶の精密合成条件の確立」、「②電着法によるペロブスカイトナノ結晶の膜密度制御条件」、「③単一粒子分光測定にてナノ結晶の成長速度・溶解速度・溶解度を明らかにする」の①に関して、ペロブスカイトナノ結晶の作製にオストワルド熟成を積極的に取り入れることで、ナノ結晶サイズをナノメートルオーダーで制御し、幅広い発光波長の制御も同時に達成した。具体的には、加温保持にて促されたオストワルド熟成により、結晶成長した粗大結晶を遠心分離にて取り除くことで、溶け出した微小なナノ結晶のみの抽出に成功した。これにより、段階的なナノ結晶の結晶サイズの微小化(約17→5 nm)を達成し、量子サイズ効果の顕著な発現も観測した。当初目標としていたサイズ20 nm以下のペロブスカイトナノ結晶の作製に関しては、目標を大きく上回って達成できたと云える。さらに、発光挙動の解明のため、時間分解発光スペクトルと発光量子効率を測定した結果、加温時間の増加に伴い、ナノ結晶の発光寿命は、23.8,→4.9 ns、発光量子効率は57→47%まで段階的な発光寿命の短寿命化と量子収率の低下を確認した。これは、ナノ結晶の結晶サイズの減少に伴い、発光挙動がナノ結晶表面の結晶欠陥の影響を受けやすくなり、その結果、無放射失活速度定数が増加したためである。②に関しては未だ試行錯誤中であるが、③に関しては、既に①の条件で作製したペロブスカイトナノ結晶を単一粒子分光測定装置で測定を試みている。現在のところ、ペロブスカイトナノ結晶の不安定さから、測定に困難を極めているが、ナノサイズの結晶をマイクロサイズにすることで、レーザー焦点下にマイクロ粒子を配置させ、スペクトルを測定可能とするところまで漕ぎ着けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
第5世代移動通信システムのサービスがアメリカと韓国で本年度より開始され、本移動通信速度が日本にも普及すれば、量子ドットにより構成される広色域ディスプレイによる医療分野におけるICTの活用が必須となる。これにより、遠隔地にいながら、医師が肉眼で診察するのと同じ精度で、診察を行うことができ、医療ICTの発展に大きく貢献出来る。 我々は、オストワルド熟成の解明と並行して、ディスプレイを指向したペロブスカイトナノ結晶の作製も急ぎ開始している。現状、世界で販売されているペロブスカイト量子ドットの性能は、半値幅が30 nm以上でサイズが不均一である等不十分であり、狭半値幅(25 nm以下)、サイズ均一な量子ドットによる色純度に優れたペロブスカイト量子ドットの開発が活発に進められている。(例えば、アルドリッチ社より販売されているペロブスカイト量子ドットのその殆どは、半値幅が30 nm前後。)申請者の作製するペロブスカイト量子ドットは、オストワルド熟成を用いて、既に20 nmもの狭半値幅を記録しており、現在、オストワルド熟成プロセスを経ないプロセスでも同等のサイズを有するペロブスカイトナノ結晶の作製法を確立しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
ペロブスカイトナノ結晶の不安定さから、測定に困難を極めているが、ナノサイズの結晶をマイクロサイズにすることで、レーザー焦点下にマイクロ粒子を配置させ、スペクトルを測定可能とするところまで漕ぎ着けた。実際の測定では、想定以上の困難さを伴っていることから、レーザー分光の専門家と他予算を導入した共同研究を2019年度4月から開始した。これにより、少なくともマイクロサイズであれば、そのサイズの増減に依存した光学測定を可能とする。特に今後のペロブスカイト量子ドットの実用化も鑑み、ナノ結晶の表面欠陥による発光の阻害の有無をAFM像とスペクトルの両面から明らかにする。
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