有機-無機ペロブスカイト(MAPbX3)の優れた光・電物性は、発光の高演色化・高効率化が同時に達成できる。しかし現状のMAPbX3は、表面欠陥や瞬間的な結晶化による劣悪な薄膜形態が高効率化を妨げている。 上記背景の下、申請者は、結晶の粗大化現象であるオストワルド熟成を用いた独創的な手法により、QDsのサイズ微小化を試み、狭半値幅発光による幅広い発光波長のチューニングの達成などの研究成果をあげてきた。 一般的にオストワルド熟成では、成長後のQDsに焦点が当てられて研究されてきたが、申請者は「溶解する微小なQDs」に着目した。具体的には、再沈殿後においてオストワルド熟成を促進させた後、成長したQDsを取り除けば、溶解させた微小なQDsのみを抽出できると考えた。さらに、ナノレベルでの微小領域では個々のQDの溶解度は、サイズ固有であるため、サイズ微小化に伴いにサイズ均一化も達成できる。 具体的成果として、オストワルド熟成を用いて、MAPbBr3 QDsの段階的なサイズ微小化に成功した(16.7→5.3 nm)。同時に、発光波長のブルーシフトも確認した(517→456 nm)。得られたサイズと発光波長の相関関係より算出した有効質量「0.10 m0」(m0:真空中の電子の質量)は、理論値の「0.80-0.13 m0」8-10許容範囲であり、発光波長のブルーシフトは、典型的な量子サイズ効果に起因する。これにより、これまで未踏であった狭半値幅(21→25 nm)且つ幅広い発光波長のチューニング(456→517 nm)に成功した。さらに、サイズ微小化に伴う発光寿命の短寿命化(23.8→8.1 ns)や励起子束縛エネルギーの増大に起因する放射失活速度の高速化(2.4→8.1 /ns)が、発光量子収率を向上(64→70%)させる等のサイズに依存した発光挙動の解明にも成功した
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