研究課題/領域番号 |
18K04808
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
比江嶋 祐介 金沢大学, フロンティア工学系, 准教授 (10415789)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 発光ナノカーボン / ソルボサーマル合成 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、バッチ式反応容器を用いて、エタノール等の有機溶媒を用いたソルボサーマル法による発光色制御、特に赤色発光の発光ナノカーボン(CDs)合成法の確立に向けて検討を進めた。原料物質として、一般に炭素源と窒素源が必要であるので、さまざまな系について検討を行ったところ、芳香族ジアミンのo-フェニレンジアミン(o-PDA)を窒素源として、ソルボサーマル合成を行った場合に、緑色および赤色の発光を示すCDsが合成可能であることが分かった。これにより、青色、緑色、赤色と可視光の広い範囲をカバーする発光が可能となった。また、様々な原料物質から生成されるCDsの励起ー発光特性は、紫外線を吸収して青色発光するバンド、青色を吸収して緑色を発光するバンド、緑色を吸収して赤色を発光するバンドの3つに大別され、発光波長の変化はバンド自体がシフトするのではなく、これらの強度比が変わることにより、実現されることが分かった。このことは、発光原子団などの化学構造の制御が発光色制御に重要であることを示唆する。特に、カテコールを炭素源とすると、比較的高強度の赤色発光を示すことが分かった。しかしながら、赤色発光のCDsは、空気中では比較的容易に酸化されて、緑色発光のCDsに変化することが分かった。一方、合成過程においては、反応時間が長くなるのにともなって、生成するCDsの発光波長が緑色から赤色へ変化することが分かっている。したがって、緑色と赤色の発光原子団の構造は比較的類似しており、末端基の修飾などにより赤色発光をより安定化することができると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定性の課題が残るものの、報告例が極めて少なく、当初困難が予想されていた赤色発光のCDsの合成に成功し、可視光領域のほぼ全域の発光が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、合成に成功した赤色発光のCDsは、報告例も極めて少なく、重要性が高いので、今年度も引き続き、反応条件の最適化を継続するとともに、長波長の発光を示すCDsの安定化について検討を進め、すでに開発済みのその場分光測定装置をあわせて利用することで、発光機構の解明に取り組む予定である。また、開発済みの流通式反応器を用いた連続合成も試みる予定である。
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