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2019 年度 実施状況報告書

無機ネットワーク制御によるイオン液体ゲルの超高強度化と高速CO2透過膜への展開

研究課題

研究課題/領域番号 18K04812
研究機関神戸大学

研究代表者

神尾 英治  神戸大学, 工学研究科, 准教授 (30382237)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード無機/有機ダブルネットワーク / 高強度イオンゲル / 無機ネットワーク / エネルギー散逸 / ネットワーク組成
研究実績の概要

イオン液体含有高強度ダブルネットワークゲル(DNイオンゲル)の高強度発現に寄与するネットワークの影響について検討した。本研究では、DNイオンゲルを高強度化するために、無機ネットワークと有機ネットワークの組成最適化を行い、高イオン液体含有量のDNイオンゲル膜を作製し、その機械的強度について評価を行った。また、無機ネットワークの内部破壊に伴うエネルギー散逸に寄与する無機粒子間相互作用に関する検討、および無機ネットワークの改良による強度向上についても検討を行った。
DNイオンゲルの優れた機械的強度は、ゲル内部に形成される無機ネットワークの内部破壊に伴うエネルギー散逸に起因する。本研究では、無機ネットワークと有機ネットワークの組成を種々変化させることによりDNイオンゲルを作製し、その機械的強度を評価した。その結果、TEOS/DMAAmが0.35 mol/molの最適組成比で調製したDNイオンゲルが従来に比べて約4倍の破壊エネルギー(1500 kJ/m3)を有することを明らかにした。また、TEOS/DMAAm比が0~0.35 mol/molまでの強度向上は無機ネットワーク組成増大に伴うエネルギー散逸量の増大に起因し、0.35 mol/mol以上での強度低下は有機ネットワークの分子量の低下に起因することを明らかにした。
また、無機ネットワークの内部破壊に伴うエネルギー散逸量に関して、水素結合性を有する双生イオン液体を含有するDNイオンゲルの力学特性を評価し、双性イオン液体による無機粒子間架橋により、DNイオンゲルの機械的強度は有意に増大することを明らかにした。この結果より、エネルギー散逸には無機粒子間の水素結合が主に寄与していることを明らかにした。加えて、無機ナノ粒子としてシリカとチタニアの複合粒子を用いることで、DNイオンゲルの機械的強度を有意に増大できることも明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

無機ネットワークの内部破壊によるエネルギー散逸に基づく機械的強度増大については、当初予定通り、無機ネットワークと有機ネットワークの組成を検討することにより、最適組成比を決定した。また、DNイオンゲルの機械的強度に対するネットワーク組成比の影響について、無機ネットワーク組成とDNイオンゲルの弾性率、破断歪み、破断応力、およびエネルギー散逸効果の関係を整理するとともに、各無機/有機ネットワーク組成で調製したイオンゲル中の有機ネットワーク分子量の詳細な分析から、有機ネットワークが無機ネットワークの内部破壊とエネルギー散逸に及ぼす効果を明らかにし、DNイオンゲルの強度発現に及ぼす無機ネットワークおよび有機ネットワークの役割を明確化できた。また、最適組成比で無機/有機DNイオンゲルを調製することにより、イオン液体含有量が最大95 wt%のDNイオンゲル膜の創製に成功した。これらは当初予定の計画通りの成果である。
加えて、エネルギー散逸量を増大するため、無機ネットワークの改良についても検討を行った。特に、無機ネットワーク間の相互作用に大きな影響を与えると予想された粒子間水素結合について、水素結合によるシリカ粒子間架橋が可能な双生イオン液体含有DNイオンゲルを作製し、その水素結合製架橋による機械的強度増大を確認した。この結果より、無機ネットワークの内部破壊による高強度化には粒子間水素結合が支配的に寄与していることを明らかにした。これも当初計画通りの成果である。加えて、チタニアとシリカを複合した無機ネットワークが、従来のシリカのみで形成された無機ネットワークよりも有意に機械的強度が増大することを明らかにした。これは当初計画では2020年度に実施を予定していた検討項目であり、予定を前倒しして検討を実施した結果である。

今後の研究の推進方策

これまでの検討結果に基づき、様々なイオン液体含有量のDNイオンゲル膜を作製し、そのCO2選択透過性能について検討を行う。ゲル内の溶質拡散性は、溶質の拡散抵抗となりうるゲルネットワーク組成の減少に伴い指数関数的に増大することが理論的に予想される。次年度はDNイオンゲル膜のCO2およびN2透過速度に及ぼすゲルネットワーク組成の影響について検討し、DNイオンゲルのCO2分離膜としての有用性を明らかにする。検討では、DNイオンゲル自体のCO2選択透過性を評価するために、DNイオンゲル自立膜を作製し、そのCO2およびN2透過係数とイオン液体含有量の関係に関する系統的な検討を実施する。また、無機ネットワークと有機ネットワークの組成比がCO2透過係数に及ぼす影響についても検討し、CO2の主要な拡散抵抗となりうるネットワークに関する知見の取得を試みる。
一方、イオン液体含有量の増大に伴うDNイオンゲルの強度低下について、イオン液体中に形成されるネットワークの詳細検討を実施する。さらに、DNイオンゲルに含有するイオン液体種についても検討を行い、種々イオン液体中に形成される無機ネットワーク構造の分析および有機ネットワークの分子量測定から、機械的強度とネットワーク構造、およびネットワーク形成機構に関する理解の深化を図る。以上の検討を通じて、機械的強度とネットワーク構造の関連性を明らかにすることで、DNイオンゲルのさらなるイオン液体含有量の増大と強度増大のためのネットワーク設計指針を明らかにする。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)

  • [国際共同研究] University of Minnesota(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Minnesota
  • [雑誌論文] Energy Dissipation via the Internal Fracture of the Silica Particle Network in Inorganic/Organic Double Network Ion Gels2020

    • 著者名/発表者名
      Tomoki Yasui, So Fujinami, Taiki Hoshino, Eiji Kamio, Hideto Matsuyama
    • 雑誌名

      Soft Matter

      巻: 16 ページ: 2363-2370

    • DOI

      10.1039/c9sm02174d

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Tough and Stretchable Inorganic/Organic Double Network Ion Gel Containing Gemini-Type Ionic Liquid as Multiple Hydrogen Bond Cross-Linker2019

    • 著者名/発表者名
      Tomoki Yasui, Eiji Kamio, Hideto Matsuyama
    • 雑誌名

      RSC Advances

      巻: 9 ページ: 11870-11876

    • DOI

      10.1039/c9ra01790a

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Ionic liquid-based gel membrane for CO2 separation2020

    • 著者名/発表者名
      Eiji Kamio
    • 学会等名
      I2CNER International Workshop
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 高イオン液体含有量の無機/有機ダブルネットワークゲル膜の創製2020

    • 著者名/発表者名
      南方雅之, 安井知己, 松岡 淳, 神尾英治, 松山秀人
    • 学会等名
      第22回化学工学会学生発表会(岡山大会)
  • [学会発表] 架橋性高分子による無機/有機ダブルネットワークイオンゲルの作製2020

    • 著者名/発表者名
      瀨川純平, 木ノ下雅之, 神尾英治, 松山秀人
    • 学会等名
      第22回化学工学会学生発表会(岡山大会)
  • [学会発表] 大量のイオン液体を含有する高強度ゲル膜の創製とそのCO2選択透過性能に関する検討2020

    • 著者名/発表者名
      神尾英治, 安井知己, 南方雅之, 飯田 祐, 松山秀人
    • 学会等名
      化学工学会第85年会
  • [学会発表] ジェミニ型イオン液体を水素結合性架橋剤とする無機/有機ダブルネットワークイオンゲル2019

    • 著者名/発表者名
      安井知己, 神尾英治, 松山秀人
    • 学会等名
      第68回高分子学会年次大会
  • [学会発表] 架橋性高分子を用いた無機/有機ダブルネットワークイオンゲルの開発2019

    • 著者名/発表者名
      木ノ下雅之, 安井知己, 神尾英治, 松山秀人
    • 学会等名
      第68回高分子学会年次大会
  • [学会発表] Double network ion gel membrane with CO2-philic ionic liquid as the CO2 separation medium2019

    • 著者名/発表者名
      Eiji KAMIO, Fatemeh Ranjbaran, Hideto Matsuyama
    • 学会等名
      12th conference of the Aseanian Membrane Society (AMS12)
    • 国際学会
  • [学会発表] Inorganic/organic Double-Network Ion Gel Membrane for CO2 Separation2019

    • 著者名/発表者名
      Eiji KAMIO, Tomoki YASUI, Hideto MATSUYAMA
    • 学会等名
      18th Asian Pacific Confederation of Chemical Engineering (APCChE 2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] 無機/有機ダブルネットワークイオンゲルの高強度発現機構の解明2019

    • 著者名/発表者名
      安井知己, 星野大樹, 藤波 想, 神尾英治, 松山秀人
    • 学会等名
      第68回高分子討論会
  • [学会発表] イオンゲル薄膜の開発を目指した不揮発性原料による無機/有機ダブルネットワークの形成2019

    • 著者名/発表者名
      木ノ下雅之, 安井知己, 神尾英治, 松山秀人
    • 学会等名
      第68回高分子討論会
  • [学会発表] CO2分離膜への応用を目指した高強度イオンゲル薄膜形成のための要素技術の確立2019

    • 著者名/発表者名
      神尾英治, 木ノ下雅之, 安井知己, 松山秀人
    • 学会等名
      膜シンポジウム2019
  • [学会発表] 選択的に作製できる3種類の高強度無機/有機ハイブリッドネットワークイオンゲル2019

    • 著者名/発表者名
      安井知己, 神尾英治, 松山秀人
    • 学会等名
      第10回イオン液体討論会
  • [学会発表] 高強度ダブルネットワークイオンゲル薄膜創製のための要素技術の確立2019

    • 著者名/発表者名
      神尾英治, 木ノ下雅之, 安井知己, 松山秀人
    • 学会等名
      第10回イオン液体討論会
  • [備考] イオン液体型ガス分離膜の開発

    • URL

      http://www2.kobe-u.ac.jp/~matuyama/cx14HP/research/research-summary-gas-sep-i.html

  • [産業財産権] イオン性液体含有構造体の製造方法及びイオン性液体含有構造体2019

    • 発明者名
      神尾英治,松山秀人,木ノ下雅之,安井知己,他3名
    • 権利者名
      神尾英治,松山秀人,木ノ下雅之,安井知己,他3名
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2019-157339
  • [産業財産権] イオン性液体含有構造体の製造方法及びイオン性液体含有構造体2019

    • 発明者名
      神尾英治,松山秀人,木ノ下雅之,安井知己,他3名
    • 権利者名
      神尾英治,松山秀人,木ノ下雅之,安井知己,他3名
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2019/034024
    • 外国

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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