本研究では「粉体圧縮成形過程での充填・成形性の指標となる局所粉体特性評価法の開発」のために,圧縮成形操作結果の定量的な予測が可能となる局所粉体特性の提案と,その指標の妥当性を検討のための圧縮方向(=底部方向)および側壁方向への圧力伝播特性を実験的検討を行った。検討において,局所流動性の違いを評価できる評価装置を試作し,種々の充填性の指標を提案した。さらにその検討の過程で,充填性が問題となる流動性の悪い粉体については,投入粒子量の不均一が問題となることも明らかとなったため,本年度は,金型への粉体投入時の時間変動に着目した。動的な粉体不均一性を実験的に検討するため,実操作を模した小型加振ホッパーを用意し,200msec間隔で0.1gの精度で質量測定できる検出器を作成し,ホッパーからの重力流動による排出特性の定量評価を試みた。その結果,排出開始振動強度が粉体特性となること,同一装置からの排出であっても粉体により時間平均質量流量と,その変動係数が異なる,すなわち排出特性を粉体特性として評価する必要があることが明らかとなった。このことは,静止した粉体の充填状況から定義できる静的粉体特性の他,動的な流動特性も評価する必要があることを示す。 圧縮成形性の実験的検討では,圧縮方向および側壁方向への圧力伝播特性の違いに着目し,粒子が弾性変形する荷重領域を対象として検討を行い,圧縮方向と側壁方向での圧力伝播比はポアソン比と1との間の値となること,金型内の段差において粒子の流動が妨げられ突起部への圧力伝播が低下することを明らかとした。その検討を塑性変形を伴う荷重領域まで拡張した結果,塑性変形が始まると圧力伝播比は1に近づく,すなわち,圧力伝播は等方的になることが明らかとなった。このことは,圧力伝播の非等方性は,粒子の弾性変形域内での低充填率成形において考慮する必要があることを意味する。
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