本研究では、カプセル内にあらゆる有用物質を高含有させることができ、かつ、そのカプセルに意図した機能を付与できる、極めて汎用性の高い気相中でのカプセル調製法の確立を目指している。初年度は、様々な液滴固化法を利用してカプセルを作製し、親水性物質や疎水性物質さらにそれらの中間の性質を有するイオン液体などを超高効率(> 99%)でカプセル中に内包でき、さらにそれらをカプセルに高含有(含有率:> 70%)させることが可能であることを実証した。一方で、カプセルの有用物質含有量が増加するほど、相対的にカプセル壁材量が減少し、カプセルの強度が低下してしまう。有用物質がカプセルの中央部に配置された単核型(中空)カプセルは、他の構造のカプセルと比べて、有用物質含有量の増加にともなったカプセルの強度低下を最小限に抑えることができる。そこで、2年目は単核型カプセル調製のための指針を確立することを目的とした。液相中において単核型カプセルを作製する際には拡張係数がその指標として利用されている。そこで、本研究の気相系においても拡張係数を利用したところ、壁厚みが均一な単核型カプセルを作製できなかった。これは、一般的に液相系ではマイクロメートルまたはナノメートルサイズの液滴から同サイズのカプセルを作製するのに対して、本研究ではミリメートルサイズの液滴からカプセルを作製するため、それに作用する重力に起因した浮力の影響を無視できないことが主要因である。そこで、液滴を転がすことにより液滴の中心から外表面に向う遠心力を発生させることで、密度が大きなカプセル壁材液を液滴の外表面に、密度が小さな有用物質液を液滴中心に移動させることにより壁厚みが均一な単核型カプセルを作製できることを実証した。さらに最終年の3年目には、上記単核型カプセルの連続生産装置の開発に取り組み、その生産速度を2年目の25倍まで高めることができた。
|