研究実績の概要 |
本研究は晶析操作における、核発生過程の新たなメカニズムについて検討するものである。過飽和溶液中からの結晶化では、結晶の起源となる核が発生し成長することで結晶化が進行する。核発生の新たなメカニズムとして、溶質の一方向の拡散が結晶化のトリガーとなり得ることを報告してきた。また、最近では各種プラスチックを過飽和溶液中で一方向に動かすことにより核化を誘導できることを発見した。本現象は、静置条件では発生せず、プラスチックを動かすことが必須である。異物界面でおこる不均一核形成において、一方向への移動が核発生を誘導することは報告されておらず、本研究ではこの現象について詳しく明らかにする事を目的としている。 初年度はモデル物質としてL-アラニンを使用し、核発生に及ぼすプラスチック移動速度の影響について詳細に検討した。プラスチックの移動には精密に移動速度をコントロールできる自動ステージを使用し、0.1mm/sec~20mm/secの範囲で様々な移動速度で制御できるシステムを構築した。本装置は同時に7本のサンプルに対してプラスチックの接触処理を行うことができる。核化の研究では、結果のバラツキが想定されるため、核条件について最低27サンプルの試験を行い、統計的に実験結果を整理した。各条件において得られた核化までの待ち時間のデータを、確率分布関数に対してプロットし、平均核化速度Jを算出した。異なる移動速度(0.5, 2.0, 5.0 mm/sec)で試験した結果、常に2 mm/secの時に核化速度が最大となる現象を見いだした。この現象のメカニズムについて次年度以降、検討する。 本研究で得られた成果について2件の国際学会発表を行った。
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